世界中の90%以上を生産...「半導体の盾」TSMCは台湾を守れるのか? むしろ中国を駆り立てるのか?
CHOKE POINT FOR CHINA
![TSMCの南京工場 TSMCの南京工場](https://f.img-newsweekjapan.jp/stories/assets_c/2025/02/newsweekjp20250213042313-0c984cf48ce4e8b846821c9eac9dc4c5144e20cf-thumb-720xauto-1515000.jpg)
TSMCの南京工場 COSTFOTOーNURPHOTOーREUTERS
<「こちらが中国を締め付けようと思えば、彼らは本当に何もできない」──最先端半導体で世界を牽引する「テクノロジーの島」はいかにして成長したのか。中台「半導体戦争」の行方を占う>
世界各地で現在進行中の多くの戦争に誰もが気を取られている間に、中国は台湾への侵攻を狙っているのではないかと、地政学の専門家たちは懸念している。中国当局に言わせれば、台湾は今も中国の省の1つであり、「一つの中国」の一部だ。
世界の先端半導体の90%以上を生産するとされる台湾への侵攻は、世界中に連鎖反応を引き起こすだろうと、英キングズ・カレッジ・ロンドン中国研究所のケリー・ブラウン所長は新著『なぜ台湾が重要か(WHY TAIWAN MATTERS)』(セント・マーティンズ・プレス社刊)の中で指摘している。「現代エレクトロニクスの頭脳」を生産するTSMC(台湾積体電路製造)の成り立ちについてのブラウンの解説を同書からの抜粋で紹介する。
台湾・台北の南西に位置する新竹サイエンスパークは、観光客が散策を楽しむような景勝地ではないが、ある種の静けさを感じる場所だ。
新竹のようなサイエンスパークは世界中に点在しているが、ある種共通の雰囲気がある。どこも箱のような建物が並び、世界市場を商品で満たすあらゆる製品を大量生産する。
このサイエンスパークは1987年、ある「勝ち組」企業の出発点となった。窓のない一枚岩風の白いビルと隣接する暗いガラス張りのブロックには、世界で最も価値のある企業の1つがあり、台湾全体のGDPの8%、輸出の12%を稼いでいる。
さらに言えば、ここは世界経済の心臓部だ。コーヒーメーカーからドローン(無人機)、スマートフォン、AI(人工知能)まで、あらゆるものを動かす半導体がこの地から送り出される。