最新記事
台湾

世界中の90%以上を生産...「半導体の盾」TSMCは台湾を守れるのか? むしろ中国を駆り立てるのか?

CHOKE POINT FOR CHINA

2025年2月13日(木)14時38分
ケリー・ブラウン(英キングズ・カレッジ・ロンドン中国研究所所長)
TSMCの南京工場

TSMCの南京工場 COSTFOTOーNURPHOTOーREUTERS

<「こちらが中国を締め付けようと思えば、彼らは本当に何もできない」──最先端半導体で世界を牽引する「テクノロジーの島」はいかにして成長したのか。中台「半導体戦争」の行方を占う>

世界各地で現在進行中の多くの戦争に誰もが気を取られている間に、中国は台湾への侵攻を狙っているのではないかと、地政学の専門家たちは懸念している。中国当局に言わせれば、台湾は今も中国の省の1つであり、「一つの中国」の一部だ。

世界の先端半導体の90%以上を生産するとされる台湾への侵攻は、世界中に連鎖反応を引き起こすだろうと、英キングズ・カレッジ・ロンドン中国研究所のケリー・ブラウン所長は新著『なぜ台湾が重要か(WHY TAIWAN MATTERS)』(セント・マーティンズ・プレス社刊)の中で指摘している。「現代エレクトロニクスの頭脳」を生産するTSMC(台湾積体電路製造)の成り立ちについてのブラウンの解説を同書からの抜粋で紹介する。

『なぜ台湾が重要か(WHY TAIWAN MATTERS)』書影

COURTESY OF ST. MARTIN’S PRESS

◇ ◇ ◇



台湾・台北の南西に位置する新竹サイエンスパークは、観光客が散策を楽しむような景勝地ではないが、ある種の静けさを感じる場所だ。

新竹のようなサイエンスパークは世界中に点在しているが、ある種共通の雰囲気がある。どこも箱のような建物が並び、世界市場を商品で満たすあらゆる製品を大量生産する。

このサイエンスパークは1987年、ある「勝ち組」企業の出発点となった。窓のない一枚岩風の白いビルと隣接する暗いガラス張りのブロックには、世界で最も価値のある企業の1つがあり、台湾全体のGDPの8%、輸出の12%を稼いでいる。

さらに言えば、ここは世界経済の心臓部だ。コーヒーメーカーからドローン(無人機)、スマートフォン、AI(人工知能)まで、あらゆるものを動かす半導体がこの地から送り出される。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、金利維持し一段の情報待つ必要 不確実性踏ま

ワールド

米国務長官と中東担当特使が訪欧、17日に米仏外相会

ビジネス

米3月小売売上高1.4%増、約2年ぶり大幅増 関税

ワールド

19日の米・イラン核協議、開催地がローマに変更 イ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 9
    あまりの近さにネット唖然...ハイイログマを「超至近…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 10
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中