【密着ルポ】オープンAIのサム・アルトマンは、オッペンハイマーに匹敵する超人か? 密着して見えてきた、生成AI最前線に君臨する男の素顔と頭の中

THE REAL SAM ALTMAN

2024年2月2日(金)18時50分
エリザベス・ワイル(ニューヨーク・マガジン誌特集担当ライター)

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チャットGPTを驚異的な成功に導いたオープンAI幹部の面々。(左から)ミラ・ムラティCTO(最高技術責任者)、アルトマンCEO、グレッグ・ブロックマン社長、イリヤ・サツキバー主任科学者(23年3月撮影) JIM WILSONーTHE NEW YORK TIMESーREDUX/AFLO

直接対面すると、アルトマンは予想以上に人当たりがよく、真摯で、穏やかで、間の抜けたところがある──要するに、ごく普通の人に見えた。髪には白いものが交ざっていて、おなじみのグレーのヘンリーネックシャツを着ていた。

その夏、アルトマンは数え切れないほどの取材を受けてきたに違いない。まず私は、インタビューに応じてくれたことに礼を述べた。

「いえいえ、大歓迎です」と、アルトマンはほほ笑んだ。

コーンフィールドとのイベントは成功だったのだろうか。「あの後、話しかけてきた人がいて、『AIの価値観をオープンAIが決めることに不安を抱いていたが、君が決めるのではないと分かった』と言われた。それで『よかった』と答えると、『違うんだ。むしろもっと心配になってきた』と相手は言う。『だって、AIの価値観を世間に決めさせるんだろう? それは嫌だ』とね」

イメージを裏切る権力志向

自分が価値観について語るなんて理不尽だと、アルトマンも感じていた。「逆の立場だったら、『なんでこんなクソッタレな連中が私に関係があることを決めるんだ』と思っただろう」と、16年に雑誌のインタビューに答えている。

あれから7年。メディア対応の経験をたっぷり積んだアルトマンは、ずっと上品な口調になっている。「オープンAIのようなものは政府のプロジェクトであるべきだという考えに、大いに共感を覚える」

ソフトな好青年のイメージは、強烈な権力志向と一致しにくい。アルトマンの友人は、「私はシリコンバレーに2万人の知り合いがいるが、(アルトマンは)まともな人間の中で一番野心的だ」と語った。

だが、自身の生い立ちを語るアルトマンは、やはり控えめだった。「中西部のユダヤ系家庭に育った。子供の時はぎこちなかった。それが今は......」と、一息置いて続けた。「テクノロジーの歴史で最も重要なプロジェクトの1つを動かしている。自分でも思いもしなかったことだ」

アルトマンは4人きょうだいの長男としてシカゴに生まれ、ミズーリ州セントルイス郊外で育った。2歳下の弟マックスと4歳下の弟ジャック、9歳下の妹アニーがいる。

中西部のユダヤ系中流家庭で育った人でないと、そのような境遇がいかに息子に強烈な自信を植え付けるか想像するのは難しいかもしれない。「両親(皮膚科医の母コニー・ギブスティンと不動産ブローカーの父ジェリー・アルトマン)は私を愛していること、そして私には無限の可能性があることを確信させてくれた」と、弟のジャックは語る。そういう子供は兵器級ともいえる強烈な自信を持つようになる。そしてそれは、心臓にもう1つ弁が付いたかのような強力な働きをする。

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