【密着ルポ】オープンAIのサム・アルトマンは、オッペンハイマーに匹敵する超人か? 密着して見えてきた、生成AI最前線に君臨する男の素顔と頭の中
THE REAL SAM ALTMAN
アルトマンは天才少年だったと、よく言われる。地元紙セントルイス・ポスト・ディスパッチは、「頭の切れる若者だらけのテクノロジー界に現れた彗星」と書いている。3歳で自宅のビデオデッキを直した。8歳の誕生日プレゼントに、両親からマッキントッシュLC IIをもらった。「コンピューターを持つ前と後で人生ががらりと変わった」と、アルトマンは振り返る。
一家は毎晩、全員で夕食を取ることにしていた。そこで子供たちはよく「平方根ゲーム」をした。誰かが大きな数字を言うと、きょうだいがその平方根を言って、アニーが電卓で誰が正解か調べるというものだ。一家は卓球やビリヤードや、ボードゲームもしたが、いつも誰が勝つか分かっていた。アルトマンは「僕が勝たなくちゃいけない。全部僕が仕切るんだ」という様子だったと、ジャックは振り返る。
アルトマンはゲイで、高校生の時にカミングアウトした。「中性的でオタクっぽいだけ」だと思っていた母親は驚いたという。だが、通っていた私立高校は「ゲイであることを進んで明かすような雰囲気ではなかった」と、アルトマンは語る。
17歳の時、学校が国際カミングアウトデーの講演会を開いたところ、一部の生徒から反対の声が上がった。そこでアルトマンは生徒会でスピーチをさせてもらうことにし、「あなたがオープンな社会に寛容であろうとなかろうと、(受け入れるしか)選択肢はないのだ」と断言した。
03年、シリコンバレーがインターネットバブルの崩壊から立ち直り始めた頃、アルトマンはスタンフォード大学に入学した。この年、起業家として知られるリード・ホフマンがリンクトインを立ち上げた。04年には、マーク・ザッカーバーグがフェイスブック(現メタ)を設立。こうしてアルトマンも、起業家を目指すことにした。
大学2年生の時、スマートフォンのGPSで友達のリアルタイム位置情報が分かるアプリ「ループト」を立ち上げた。そしてスタートアップを育成・投資するYコンビネーター(YC)のサマーキャンプに参加した。6000ドルの資金を得て、同じような志の仲間と切磋琢磨したが、ループトはあまり広がらなかった。
ビル・ゲイツと並ぶ天才?
「よくいる頭のいい若者という感じだった」と、ホフマンは振り返る。ループトはシリコンバレーで指折りの有力ベンチャーキャピタルであるセコイア・キャピタルからも500万ドルを調達したが、伸び悩み、アルトマンは12年に売却を決めた。売却金額は4340万ドルだった。