【密着ルポ】オープンAIのサム・アルトマンは、オッペンハイマーに匹敵する超人か? 密着して見えてきた、生成AI最前線に君臨する男の素顔と頭の中

THE REAL SAM ALTMAN

2024年2月2日(金)18時50分
エリザベス・ワイル(ニューヨーク・マガジン誌特集担当ライター)

240206P22_APL_chart_484_720Jsai.jpg

アルトマンは天才少年だったと、よく言われる。地元紙セントルイス・ポスト・ディスパッチは、「頭の切れる若者だらけのテクノロジー界に現れた彗星」と書いている。3歳で自宅のビデオデッキを直した。8歳の誕生日プレゼントに、両親からマッキントッシュLC IIをもらった。「コンピューターを持つ前と後で人生ががらりと変わった」と、アルトマンは振り返る。

一家は毎晩、全員で夕食を取ることにしていた。そこで子供たちはよく「平方根ゲーム」をした。誰かが大きな数字を言うと、きょうだいがその平方根を言って、アニーが電卓で誰が正解か調べるというものだ。一家は卓球やビリヤードや、ボードゲームもしたが、いつも誰が勝つか分かっていた。アルトマンは「僕が勝たなくちゃいけない。全部僕が仕切るんだ」という様子だったと、ジャックは振り返る。

アルトマンはゲイで、高校生の時にカミングアウトした。「中性的でオタクっぽいだけ」だと思っていた母親は驚いたという。だが、通っていた私立高校は「ゲイであることを進んで明かすような雰囲気ではなかった」と、アルトマンは語る。

17歳の時、学校が国際カミングアウトデーの講演会を開いたところ、一部の生徒から反対の声が上がった。そこでアルトマンは生徒会でスピーチをさせてもらうことにし、「あなたがオープンな社会に寛容であろうとなかろうと、(受け入れるしか)選択肢はないのだ」と断言した。

03年、シリコンバレーがインターネットバブルの崩壊から立ち直り始めた頃、アルトマンはスタンフォード大学に入学した。この年、起業家として知られるリード・ホフマンがリンクトインを立ち上げた。04年には、マーク・ザッカーバーグがフェイスブック(現メタ)を設立。こうしてアルトマンも、起業家を目指すことにした。

大学2年生の時、スマートフォンのGPSで友達のリアルタイム位置情報が分かるアプリ「ループト」を立ち上げた。そしてスタートアップを育成・投資するYコンビネーター(YC)のサマーキャンプに参加した。6000ドルの資金を得て、同じような志の仲間と切磋琢磨したが、ループトはあまり広がらなかった。

ビル・ゲイツと並ぶ天才?

「よくいる頭のいい若者という感じだった」と、ホフマンは振り返る。ループトはシリコンバレーで指折りの有力ベンチャーキャピタルであるセコイア・キャピタルからも500万ドルを調達したが、伸び悩み、アルトマンは12年に売却を決めた。売却金額は4340万ドルだった。

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中