野心的で、狡猾で、マキャベリスト的? オープンAI「お家騒動」で垣間見えたサム・アルトマンの本性...「効果的利他主義」の顔は見えず
AN AWKWARD RETURN
ここに、今回の争いについてもう1つ重要な要素が見えてくる。アルトマンは穏やかな風貌や、世界中の政府にAIの監視と規制を求めているのとは裏腹に、彼のリーダーシップの核心にあるのは冷徹さなのだ。
15年の設立からアルトマンがオープンAIに君臨してきた日々を振り返ってみれば、彼のオープンAIに関するビジョンや目標を脅かすような厳しい対立が次々に起こり、いずれも相手が会社を去っている。
オープンAIの共同設立者兼共同会長だったイーロン・マスクは18年に、AIの開発競争で遅れていることにいら立ち、自分が全面的に舵を取ると提案した。しかし、アルトマンとブロックマンに拒否されてマスクは理事を退任し、計画していた資金提供も全て取りやめた。
オープンAIの全権を握ることになったアルトマンは、マスクの撤退による資金難に対処するために、19年に事業部門を設立した(非営利団体であるオープンAIの子会社として営利の事業部門が置かれた)。より速いペースで外部資金を調達し、ビッグテックのAI開発との競争力を維持しようと考えたのだ。
だが社内で効果的利他主義を強く支持する人々は、この資本主義的な転換を警戒した。オープンAIが非営利団体として始まった理由は、AI開発が利益という危険なモチベーションを得ないようにするためだった。先のNYTの記事によると、反対派はアルトマンの退任を理事会に要求したが、結果として彼らが会社を去り、アンソロピックを創業した。
自分こそがAIの未来を導く
皮肉なことに、アンソロピックは現在、アマゾンやグーグルなどビッグテックから潤沢な資金を得て、ダンジェロのクオーラともアプリで提携している。さらに、今回の騒動の最中にオープンAIの一部の理事がアンソロピックに合併を持ちかけたが、アンソロピックは断固として拒否したと報じられた。
つまり、オープンAI内で誰かがアルトマンの権力を奪おうとし、結局諦めて去ったのは、18年以降、今回で3回目ということになる(先の2回は去った側がアルトマンの競争相手になった)。最近のブルームバーグの記事が伝えているとおり、シリコンバレーでは長年、アルトマンは「野心的で、狡猾で、マキャベリスト的でさえある」という評判だ。