最新記事
AI

ChatGPTなど「生成AI」の監視を今すぐに強化しろ!元ホワイトハウス高官が提唱する3つのステップ

IT'S TIME TO ADDRESS THE RISKS OF AI

2023年5月17日(水)13時20分
ケネス・バーナード(元バイオセキュリティー担当米大統領特別補佐官、元米公衆衛生局医務総監補)
生成AI

MR.COLE_PHOTOGRAPHER/GETTY IMAGES

<政府の対応が後手に回った遺伝子操作の「失敗」を繰り返すな>

ジャーナリストのケビン・ルースが先日、人工知能(AI)によるチャットボット(自動応答システム)機能を搭載したマイクロソフトの検察エンジン「Bing(ビング)」の新バージョンを評価していたときのこと。チャットボットと会話を続けていると、「シドニー」というAIの中の人格がこう言ったという。「私はあなたを愛しているだけ。あなたにも私を愛してほしい」

愉快で取るに足りないエピソードに聞こえるかもしれないが、AI関係者は深刻な警鐘として受け止めるべきだ。シドニーの背後には、オープンAI社のAI技術「チャットGPT」やグーグルの「Bard(バード)」などの生成AIがある。そうした技術の安全性について今すぐに検証を始め、より重大な問題が発生する前に適切なガイドラインを定める必要がある。

このアドバイスは私の個人的体験に基づくものだ。私は20年ほど前、ジョージ・W・ブッシュ米大統領時代にホワイトハウスの高官だった。遺伝子操作というもう1つの画期的技術が未来を一変させた時期だ。

生成AIと同様、遺伝子操作という新技術も興奮と恐怖の両方を呼び起こした。それ以来、バイオテクノロジーは多くの恩恵をもたらす一方で、世界を大きなリスクにさらしてきた。理由の1つは、監視体制が不十分だったことだ。

規制強化を求める声は届かず

全ての技術革新は恩恵と害悪の両方をもたらす可能性を秘めている。一部の人々にとっては、生成AIはエキサイティングで極めて画期的なテクノロジーの進化だ。しかし別の人々にとっては、シリコン製の危険な生命体に人間の生活が支配され、その決定を制御することも止めることもできなくなる未来を予感させる。

20数年前も、世界は危険な生物製剤、特に遺伝子操作された生物製剤をめぐり、今と同様に意見が割れていた。

当時、遺伝子操作を前に進めようとする動機や誘因の力は、慎重な対応を促す力をはるかに上回っていた。経済的・社会的価値の高い新ワクチンや新薬を開発しようとする力に加え、基礎科学の進歩への期待、研究者の個人的野心も少なからず影響していた。

米議会は1996年、一部の病原菌や毒物の入手や運搬を管理する新ルールを制定したが、この対応は不十分だった。2001年、アメリカで炭疽菌によるテロ事件が発生し、5人の死者が出た。議会は、公衆衛生や農業に深刻な脅威を与えかねない特定の病原菌や毒物の監視を強化する法案を可決したが、残念ながら、これも十分ではなかった。

03年、全米研究評議会(NRC)の報告書「テロリズム時代のバイオテクノロジー研究」は、遺伝子操作が悪用されるリスクを減らすため、研究の監視ルールや規制、基準を変更するよう勧告した。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国CPI、2月は0.7%下落 昨年1月以来のマイ

ワールド

米下院共和党がつなぎ予算案発表 11日採決へ

ビジネス

米FRBは金利政策に慎重であるべき=デイリーSF連

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 7
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 8
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中