TikTokより「万能アプリ」WeChatを恐れるべき理由...中国共産党の監視・検閲システムの重要な一部
You Chat We Censor
複数の独立系ニュースアカウントも陌上美国と同じ憂き目を見た。過去2年間に閉鎖されたアカウントの閉鎖前のフォロワー数はそれぞれ推定5万~30万人。例えば進歩的な中国系アメリカ人グループが開設したChinese Americansは20年の米大統領選後の投稿で「アメリカの復活、民主主義の勝利」を祝った後に閉鎖された。Yalerica Roadを開設した中国系アメリカ人の大学教授はアカウントを閉鎖された後、次のようなメッセージを発表した。「私にとって非常に暗い夜だった。より良い明日のためには批判的な声も許容する必要があると改めて感じた」
米人権擁護団体フリーダム・ハウスの調査によれば、党に批判的なアカウントとつながりのあるジャーナリストやコメンテーターも投稿の削除、アカウント閉鎖、チャットグループからの排除といった目に遭っているという。
一方、アメリカは中国人を二級市民扱いする、白人は常に中国人を差別する、アメリカは銃社会だ、といった反米的な投稿は日常的に拡散され、中国語を話すアメリカ人でニュースソースとしてウィーチャットを使うユーザーの目に触れる。中国人と中国系アメリカ人がアメリカの政治に抱く憧れを抑え付け、アメリカの政治システムも中国の権威主義体制と大差ないと思い込ませるのが党の狙いだ。
実際、共産党は自分たちの見解を支持するアカウントを積極的に推している。例えば20年11月に創設されたブロガーのアカウントCicero2020は急速にフォロワー数を伸ばした。ウィーチャットが陌上美国のフォロワーにこのアカウントを盛んに推奨したからだ。
最終的にざっと3分の1の陌上美国のフォロワーがCiceroに流れた。Ciceroは独立系アカウントを自称しているものの、運営者は中国の国営メディアの元記者で今も中国に住んでいる。
中国系を操るツールに共産党はアメリカと民主主義をこき下ろし、ユーザーの分断を助長する過激な書き込みも奨励している。その証拠に、アメリカの選挙には不正があると主張し、Qアノンの偽情報を広め、ロシアのウクライナ侵攻を支持する極右のコメントが中道右派のアカウントにどっと寄せられている。
共産党のウィーチャット支配のもう1つの手法は「人海戦術」である。わずかな報酬をもらって世論誘導的な書き込みをする「五毛党」と呼ばれるユーザーが、共産党のプロパガンダ要員として中国の国内外で党と政府の見解を広め、それに反するコンテンツを徹底的にたたいているのだ。