最新記事
WeChat

TikTokより「万能アプリ」WeChatを恐れるべき理由...中国共産党の監視・検閲システムの重要な一部

You Chat We Censor

2023年3月7日(火)12時30分
セス・カプラン(ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際関係大学院教授)

230314p26_WCT_02.jpg

多くのアメリカ人がウィーチャットをスマホに入れて日々使っているが、中国当局が世論操作に利用するリスクがある PHOTO ILLUSTRATION BY KOSHIRO K/SHUTTERSTCOK

アメリカのユーザーを検閲する場合、最もよく使われる手はそのユーザーのアカウントへの中国からのアクセスをブロックする、あるいは中国の電話番号をアカウントに使っているユーザーがアクセスできないようにする方法だ。検閲されている本人はログインしてさまざまな機能にアクセスできるが他のほとんどのユーザーは閲覧できない。

より厳しいアクセス全面禁止の場合は本人もログインできず、これは中国ほどではないがアメリカでも起きている。あるいは個別のコンテンツをユーザーに気付かれずに完全に遮断し、ユーザーは何も反応がないことで初めて気付くというケースもある。

「不適切投稿」で閉鎖も

直接的に手を下される場合もある。中国系移民でノースカロライナ大学で博士号を取得したリディア・リウは、18年春にウィーチャットで公開アカウント「陌上美国(MoshangUSA)」を開設。「アメリカ生活の実態を全米や世界中の中国系移民に届ける」べく、3年がかりで始めたという。陌上美国はフォロワー数25万人を超え、在米中国系移民1世の社会、文化、政治の話題を扱う場としてはSNS有数の規模となった。

しかし、アメリカ生活に対する肯定的な見方を(民主主義と自由も含めて)奨励すれば、共産党の見解に盾突くことになる。党の見解は中国国内のテレビ、映画、SNS、出版物、地下鉄や建築現場のポスターなどを通じて喧伝され、長い屈辱の末の中国の栄光の復活(と屈辱を招いた欧米列強の終焉)における党の救世主的な役割を強調する。

リウが多くのトピックを自己検閲したにもかかわらず、ウィーチャットは陌上美国をまず2週間、その後さらに6カ月停止。米中貿易戦争や新型コロナ対策などに関して中国寄りでない内容や、移民がアメリカ生活のメリットを語るなど党の言説を傷つける投稿を削除した。数十件が投稿前に不適格とされ、40件余りが投稿後に削除、コメントも検閲された。リウは再三攻撃され、愛国的なユーザーに個人情報をさらされたりもした。

標的になっている中国系アメリカ人のアカウントはほかにもある。共産党は直接または企業に圧力をかけてコンテンツを管理。特定のアカウントの閉鎖、検索結果表示順位の操作、公開アカウント開設資格の制限などを行っている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 3
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈祷」を中国がミーム化...パロディ動画が拡散中
  • 4
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 5
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 6
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 7
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 8
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中