「敗者の日本」に学ぶ、台湾半導体の過当競争からの「出口戦略」とは?
LESSONS FROM JAPAN
今の台湾がまさにそうだ。半導体業界の競争が熾烈で、企業は利益が減少し、イノベーションよりも価格競争に走る。これは短期的には台湾に有利に働く。安い製品のほうが売れるからだ。だが長期的には、エレクトロニクス分野では特に、企業が技術開発に投資するだけのインセンティブが不可欠だ。
半導体業界の競争は激化している。中国はIC(半導体集積回路)産業発展推進戦略の下、国内の半導体業界に1兆4000億ドルを投じ、2035年までにクローズドループ型の半導体価値連鎖の実現を目指す。
韓国は半導体研究に8億7000万ドルを投資する計画だ。EUはマイクロエレクトロニクス支援計画で17億5000万ユーロの拠出を約束。
アメリカは今年8月に成立したCHIPS法に基づき、半導体業界に数百億ドル規模の投資をする構えだ。
こうした状況では、台湾の現在のモデルは時代遅れになりかねない。半導体のような資本集約型・イノベーション主導型の部門では、長期的なメリットを維持するには研究資金が不可欠だ。
台湾の行くべき道は2つに1つ。1つは世界の半導体製造の他の主要国や地域に倣い、大規模な政府助成金・補助金でイノベーションを促進する道だ。
台湾は70年代にこの道を選んだ。政府は政府系研究機関である工業技術研究院を通じて研究資金を直接提供、技術をTSMCなどの企業に波及させた。だが、もうこの方法で中国やアメリカやEUなどはるかに大規模な国や地域に対抗するのは難しいだろう。
もう1つは、戦後日本の「過当競争」への取り組みを教訓に垂直統合強化を推進する道だ。台湾の半導体業界にはイノベーション推進に必要な中小企業が多い。台湾政府はこれらの企業に戦略的連携やコンソーシアム(共同事業体)で利益を増やし、それを研究に回して長期成長を可能にすることを奨励するべきだ。
短期的な「過当競争」で価格を下げ、長期的なイノベーションで成長を推進──。台湾は戦後日本の過当競争の概念に学び、半導体業界を再編してイノベーションを促すべきだ。
From thediplomat.com