最新記事

台湾半導体

「敗者の日本」に学ぶ、台湾半導体の過当競争からの「出口戦略」とは?

LESSONS FROM JAPAN

2022年12月2日(金)15時14分
ゲイリー・シェ、ソフィー・グラント(ともに北京大学の客員研究員)

221206p22_RKS_01.jpg

分業を選択して成功した台湾の半導体業界(1989年) ALEXIS DUCLOSーGAMMA-RAPHO/GETTY IMAGES

台湾の半導体産業は、多くの中小企業が競争し合うダイナミックなコミュニティーであり、市場寄りの産業政策のたまものと言っていい。

だがそれは過当競争をもたらし、業界全体を衰弱させる危険をはらむ。それが現実になれば、台湾のメーカーは十分な利益を上げて技術革新に投資し、世界市場の動向に適応することができなくなるかもしれない。

半導体産業の価値創造には、設計、製造、そしてATP(組み立て、検査、梱包)という3つの段階がある。

韓国、アメリカ、ドイツなどの大手半導体メーカーは、バリューチェーン(価値連鎖)に基づきこの3段階を垂直統合または水平分業したグループを形成している。それにより規模の経済を実現して、市場支配力を高めるのだ。

激しい価格競争が招くリスク

ところが台湾の半導体メーカーは、3段階の1つにしか携わらない。例えば、TSMCは半導体の製造だけを引き受け、設計や梱包はしない。2000年代初頭、台湾には315社以上の半導体関連企業があったが、どれも特殊な工程に特化していた。

こうした極度の分業システムにはメリットがある。第1に低価格を維持できる。サプライヤーの競合のおかげで、買い手は常に最も安い価格で買える。第2に「規模の経済」効果を迅速に実現できる。各社が特定の作業に特化でき、グローバル化した業界と共に成長できるからだ。

過去数十年、こうした相互依存と企業間協調の組み合わせが台湾の半導体産業の急成長に役立ってきた。だが最近、このシステムのデメリットが次第に明らかになっている。

産業組織論の分野では効率には静的効率と動的効率の2種類がある。企業がリソースの配分で黒字を最大化するのが静的効率、新たな製品やサービスで全体の黒字を増やすのが動的効率だ。平たく言えばパイを上手に焼くのが静的効率、パイを大きくするのが動的効率だ。

経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが提唱したシュンペーター仮説によれば、大企業ほど研究開発が活発で動的効率が高いが、競争的な構造の市場ほど価格が下がり静的効率が増す。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン、カタールのエネ拠点攻撃 サウジも標的に ガ

ワールド

米政権が内航海運に外国船の一時的利用容認、エネルギ

ビジネス

FRB、2会合連続据え置き パウエル議長「中東情勢

ビジネス

米国株式市場=急反落、ダウ768ドル安 FRBは金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 3
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 4
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 5
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中