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ファッション「古着=お古」の意識は完全に変わった...従来型アパレルの21倍も成長できた理由
THE OLD BOOM

今や古着はファストファッションの強敵と目される AP/AFLO
<中古衣料・中古ブランド品ECサイトの発展と、消費者意識の変化が市場の急成長を後押し。古着が消費者と地球環境とアパレル業界を救う?>
巨大な力がアパレル業界をつくり替えようとしている。
その力とは古着だ。アメリカのアパレル市場規模は約3790億ドル。中古衣料のEC(電子商取引)サイトを運営するスレッドアップの報告書によれば、市場に古着が占める割合は2021年の360億ドルから25年には770億ドルと、今後4年で2倍以上になる。19年には古着関連の事業が、従来型アパレル小売業の21倍の速度で拡大した。
このあおりを食いそうなのがファストファッションだ。H&Mやザラに代表されるこの分野の企業は、2000年代初頭から急成長。使い捨ての衣料を大量生産してスピーディーに流通させ、安い価格で購買欲を刺激することでアパレル産業を塗り替えた。
30年にはファストファッションの市場規模は400億ドルになる見通しだが、古着の規模は840億ドルと予想される。
古着市場は実店舗と、デジタル再販プラットフォームに二分される。現在のブームを動かしているのは後者だ。
長年、古着とは文字どおり「お古」のイメージで、買い求めるのは主に安価な服を探す人かコレクターだった。
だが、意識は変わった。専門誌ジャーナル・オブ・グローバル・ファッション・マーケティングに発表された論文によれば、最近は多くの消費者が古着の質を新品と同等かそれ以上と考えている。若者の間では中古衣料を買って再販する「ファッションフリッピング」も流行している。
需要の増加と、個人間で手軽に中古衣料を売買できるトレードシーやポッシュマークといったプラットフォームの登場を受け、古着のEC市場はアパレル界の大きなうねりになりつつある。
中古ブランド品の市場も拡大した。鑑定済みの高級品を委託販売するECサイトのリアルリアルやベスティエール・コレクティブには、シャネルやエルメスの商品が並ぶ。この分野の市場価値は、19年に20億ドルに達した。
服の寿命を延ばす効果
コロナ禍の今は、手頃な価格もブームを後押ししている。この1年、消費者は特に必要でない衣類を買い控えるとともに、値段よりも品質を重視するようになった。
中古衣料の再販業者にとって新型コロナウイルスの感染拡大による経済の縮小は、サステナビリティー(持続可能性)への関心の高まりと相まって追い風となっている。
古着には、アパレル業界を活性化させるばかりか環境問題に寄与する可能性がある。古着が広まれば1着の服に対する所有者が増え、ファストファッション全盛期に短くなった服の寿命も延びる。服が廃棄されるまでに着られる平均回数は、00年代からの15年で世界的に36%減った。
ファストファッション製品と異なり、質のいい古着は価値が下がりにくい。新品ではなく上質な古着を買うことは、理屈の上では環境に優しい。
とはいえEC市場は安い衣類へのアクセスを増やし、過剰な消費をあおるとの批判もある。私たちが行った最新調査も、この可能性を裏付けた。
アメリカでポッシュマークのようなフリマアプリを頻繁に使う若い女性を対象に聞き取りを行ったところ、回答者は古着を買うことを、新品購入に代わる消費モデルとも衣料生産への依存を減らす手段とも見ていなかった。古着市場はむしろ、安い服と普通は手の出ないブランド品の両方を手に入れる場だった。
だが消費者の動機がどうであれ、リユースが増えることはアパレル業界の「ニューノーマル」に向けた大きな一歩だ。サステナビリティーの改善につながるかどうか見守りたい。

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Hyejune Park, Associate Professor of Fashion Merchandising, Oklahoma State University and Cosette Marie Joyner Martinez, Associate Professor of Fashion Merchandising, Oklahoma State University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.