グーグル「シカモア」、中国「九章」 量子コンピューターの最前線を追う
A QUANTUM LEAP
量子コンピューターの実用化にはまだ時間がかかりそうだが、秘密保持について心配するのに早過ぎるということはない。
NSAなどの情報機関は、膨大な量の暗号化データを収集していると考えられている。いずれ量子コンピューターによって解読できると期待してのことだ。そして、これらの機関は、敵対勢力が暗号を破れるようになることを恐れ始めている。
そうした懸念を受けて、アメリカでは新しい暗号システムを導入する計画が持ち上がっている。NSAは2015年、量子コンピューターでも解読できない暗号システムへの転換を目指す方針を打ち出した。
「量子コンピューターによりコンピューターの能力が高まったとき、既存のインターネット・セキュリティーと暗号技術では対処できないことが明らかになった」と、NSAの広報担当者は科学ジャーナリストのナタリー・ウォルチョバに語っている。
米国立標準技術研究所(NIST)は2017年、量子コンピューターによっても破られない暗号方式の公募を開始。2020年には、その候補を15まで絞り込んだ。
現在、最も人気があるのは「格子暗号」と呼ばれる方式だ。これは、既存の公開鍵暗号とは数学的基盤が全く異なる方式である。
もっとも、政府機関などの組織に、新しい暗号方式への移行を受け入れさせるのは簡単ではない。脅威が差し迫っていなければ、人はどうしても現状でよしとしてしまう。
「人々はいまだに、90年代に破られた暗号技術に基づいたブラウザを使い続けている」と、アーロンソンは言う。「悲しいことだ」
<2021年2月16日号「いま知っておきたい 量子コンピューター」特集より>
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