これって適応障害?と思ったら──心療内科医が教えるストレス対処、自宅安静の過ごし方
治療と予防は「自分が自分の主治医になる」から
本書はまた、適応障害の対処法として、セルフコントロールを柱に据えている点も特徴のひとつだ。
特に外部要因と内部要因では、専門職の介入以上にセルフコントロールが重要だという。適応障害の治療と予防は「自分が自分の主治医になる」という気持ちを持つことから始まるのだ。
とはいえ、難しいことをする必要はない。いつもより少し早く寝る、週末に運動する、間食を控えるといった小さなことの積み重ねでいい。それは、自分の体調に常に気を配ることを意味する。
また、医療機関で適応障害と診断された場合には、自宅安静を指示されることが多い。ストレス源である職場から距離を置くためだが、ただ休めばいいというものではない。ダメージを受けた心が万全に回復する前に復帰すれば、すぐ悪化してまた休む、といったことを繰り返しかねない。
そこで、まずは思い切って長期間(最低でも1カ月)の休みを取ることを著者は勧めている。
ただし、事前に期間を決めると、復帰というゴールが精神的圧迫になるため、延長できることが大切だ。そして、休職期間を「ダラダラ期」「活動期」「復職期」に分け、順にステップを踏むよう指導する。
それぞれの段階には、やるべきこと、考えるべきこと、そして、やってはいけないことがある。例えば「ダラダラ期」は、その名のとおりダラダラする期間で、復職のことは考えてはいけない。職場に関するものを全てシャットアウトして、仕事に対して無責任になる必要がある。
「もしかして適応障害?」と思ったらまずすべきこと
著者によれば、適応障害は大昔からある病気で、人間が社会を形成するようになった頃からあるに違いないそうだ。
日本では、外交官から皇太子妃となった雅子皇后が適応障害と診断されたことで、広く認知されるようになったが、いまだに系統立てられた対処法はないという。
著者自身も、大学病院では巨大組織ゆえのストレスに苦しみ、先輩の精神科医に相談したが何の解決にもならなかったと述べている。そうした経験から、実際のストレスの現場に即した解決策や対処法を提案し、今まさに苦しんでいる人にすぐに役立つ内容となっている点も、本書の魅力だろう。
「もしかして適応障害?」と思ったなら、まずは本書にあるチェックリストに従って、自己診断してみるといいだろう。もしも適応障害だと判明しても、そのつらい時期を乗り越えるために知っておきたいことは、この本に詰まっている。
『もしかして、適応障害?――会社で"壊れそう"と思ったら』
森下克也 著
CCCメディアハウス
【参考記事】自分に自信がないのは克服できる、自分ひとりで(認知行動療法の手引き)
2020年2月4日号(1月28日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集。声優/和菓子職人/民宿女将/インフルエンサー/茶道家......。日本のカルチャーに惚れ込んだ中国人たちの知られざる物語から、日本と中国を見つめ直す。