これって適応障害?と思ったら──心療内科医が教えるストレス対処、自宅安静の過ごし方
日本人が適応障害にかかりやすい3つの理由
著者は日本人に特有の「適応障害にかかりやすいメンタリティ」を指摘し、問題視している。すなわち、「勤勉」「現状容認」「依存」だ。
勤勉であることは日本人の利点として昔からもてはやされてきたが、それは多くの場合、自己犠牲的であり、自虐的ですらある。それによって日本は高度成長を成し遂げたわけだが、「快」を伴わない勤勉さは、それ自体がストレスになる。
また、調和をよしとする日本人は、多少の不具合があっても目をつぶり、現状を変えたがらない。不満を呑み込み続けた結果、ストレスだけが蓄積していく。こうした現状容認の姿勢は、勤勉と同様によい面もあるものの、いわゆる「ブラック企業」の存在を許す要因にもなっている。
このところ勤勉よりも色濃くなっているのが、依存だ。誰かに頼る気持ちが強く、当事者意識に乏しい人が増えているという。言い換えれば自立性の欠如であり、そのため容易に欲求に流されてしまう。「仕事には行けないが趣味は楽しめる」という新型うつ病は、この典型だ。
程度の差こそあれ、多くの日本人がこうしたメンタリティを持っているのだという。それだけ職場でストレスを感じやすいということだ。2017年の調査では、労働者の58.3%が、職場で「強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある」と答えている(厚生労働省「労働安全衛生調査」)。
適応障害になりやすい性格には4タイプある
だが、ストレスの感じ方は人によって異なる。同じストレスにさらされても、精神的に追い込まれる人がいる一方で、まったく平気な人もいる。つまり、ストレスという外部要因だけでなく、感じ方や考え方といった心理的要素(内部要因)もまた、適応障害の要素なのだ。
本書では、適応障害にかかりやすい性格として4つのタイプが紹介されている。
仕事という任務遂行に忠実なあまり、その邪魔になる感情や思考を無意識に押し殺してしまう「執着性格」。
せっかちで怒りっぽく、競争心が強くて積極的・野心的、多動などが特徴の「タイプA」。
快活で社交的だが浮き沈みが激しく、人間関係のストレスに弱い「循環気質」(日本人に多いと言われ、全人口の約2割を占めているという)。
そして、傷つくことを恐れ、とにかく打たれ弱い「回避性性格」も適応障害にかかりやすい。
外部要因と内部要因のどちらが大きいかは人それぞれで、心理面は問題ないもののストレスがあまりにも大きい人もいれば、小さなストレスにもクヨクヨと悩みがちな人もいる。
ここにさらに、ストレス反応という時間要因が加わって、適応障害は成立する。時間要因とは、その状態が長く続いているか短期間かということであり、具体的には体に表れる症状で判断される。抑うつや不安、不眠や頭痛、食欲不振、腹痛、便秘や下痢、めまいなどだ。
これら3つの要因のうち、外部要因は職場の問題であるため、まずは産業医などのサポートが必要になる。内部要因は心理療法を行うカウンセラー、時間要因は医師による治療が必要だ。