最新記事

医療

これって適応障害?と思ったら──心療内科医が教えるストレス対処、自宅安静の過ごし方

2020年2月1日(土)17時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

日本人が適応障害にかかりやすい3つの理由

著者は日本人に特有の「適応障害にかかりやすいメンタリティ」を指摘し、問題視している。すなわち、「勤勉」「現状容認」「依存」だ。

勤勉であることは日本人の利点として昔からもてはやされてきたが、それは多くの場合、自己犠牲的であり、自虐的ですらある。それによって日本は高度成長を成し遂げたわけだが、「快」を伴わない勤勉さは、それ自体がストレスになる。

また、調和をよしとする日本人は、多少の不具合があっても目をつぶり、現状を変えたがらない。不満を呑み込み続けた結果、ストレスだけが蓄積していく。こうした現状容認の姿勢は、勤勉と同様によい面もあるものの、いわゆる「ブラック企業」の存在を許す要因にもなっている。

このところ勤勉よりも色濃くなっているのが、依存だ。誰かに頼る気持ちが強く、当事者意識に乏しい人が増えているという。言い換えれば自立性の欠如であり、そのため容易に欲求に流されてしまう。「仕事には行けないが趣味は楽しめる」という新型うつ病は、この典型だ。

程度の差こそあれ、多くの日本人がこうしたメンタリティを持っているのだという。それだけ職場でストレスを感じやすいということだ。2017年の調査では、労働者の58.3%が、職場で「強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある」と答えている(厚生労働省「労働安全衛生調査」)。

適応障害になりやすい性格には4タイプある

だが、ストレスの感じ方は人によって異なる。同じストレスにさらされても、精神的に追い込まれる人がいる一方で、まったく平気な人もいる。つまり、ストレスという外部要因だけでなく、感じ方や考え方といった心理的要素(内部要因)もまた、適応障害の要素なのだ。

本書では、適応障害にかかりやすい性格として4つのタイプが紹介されている。

仕事という任務遂行に忠実なあまり、その邪魔になる感情や思考を無意識に押し殺してしまう「執着性格」。

せっかちで怒りっぽく、競争心が強くて積極的・野心的、多動などが特徴の「タイプA」。

快活で社交的だが浮き沈みが激しく、人間関係のストレスに弱い「循環気質」(日本人に多いと言われ、全人口の約2割を占めているという)。

そして、傷つくことを恐れ、とにかく打たれ弱い「回避性性格」も適応障害にかかりやすい。

外部要因と内部要因のどちらが大きいかは人それぞれで、心理面は問題ないもののストレスがあまりにも大きい人もいれば、小さなストレスにもクヨクヨと悩みがちな人もいる。

ここにさらに、ストレス反応という時間要因が加わって、適応障害は成立する。時間要因とは、その状態が長く続いているか短期間かということであり、具体的には体に表れる症状で判断される。抑うつや不安、不眠や頭痛、食欲不振、腹痛、便秘や下痢、めまいなどだ。

これら3つの要因のうち、外部要因は職場の問題であるため、まずは産業医などのサポートが必要になる。内部要因は心理療法を行うカウンセラー、時間要因は医師による治療が必要だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中