これって適応障害?と思ったら──心療内科医が教えるストレス対処、自宅安静の過ごし方
Cecilie_Arcurs
<会社で壊れそう、ストレスが大きい、疲れがとれない......。自分の心と体をどう守るか。適応障害になりやすい性格からセルフコントロールの方法まで、適応障害を30年治療してきた医師が伝授する>
「働き方改革」が、2020年4月からいよいよ本格化する。2018年7月に公布された働き方改革関連法は、大企業には2019年4月から適用されているが、今年4月には中小企業にも範囲が広がる。
この法律ができた背景のひとつは、時に自殺につながるなど、職場でのストレスが大きな社会問題になっていること。だが、ひとくちに「職場のストレス」と言っても、それは千差万別だ。仕事そのものが負担になっている人もいれば、対人関係に問題を抱えている人も多い。
かつては「気持ちの問題」として片付けられ、ともすれば「社会人としてなっていない」などと非難されることすらあった。現在では「職場のうつ」は広く認められるようになっており、「適応障害」という名で診断されている。
『もしかして、適応障害?――会社で"壊れそう"と思ったら』(森下克也・著、CCCメディアハウス)は、会社に行きたくない、やる気が出ない、頑張りすぎて疲弊する、休んでも疲れがとれない......そんな悩みを抱える全ての働く人に、心と体を自分で守り、治す方法を伝授してくれる。
自分が適応障害かもしれないと思ったら、どうすればいいか。ストレスにはどう対処するのか。自宅安静を指示されたとき、どう過ごすべきか。そういった「知っておきたいこと」を余すことなく記載した一冊だ。
昔は中高年「モーレツ社員」、最近は女性と若者が多い
著者の森下氏は心療内科医として、約30年にわたって適応障害の治療に当たってきた。その著者によれば、適応障害とは「正常なストレス反応からくる誰にでも起こりうる心身の変化」だ。
嫌なことがあれば落ち込むし、それ自体は正常な反応だが、度が過ぎれば病気として治療が必要になるということ。きわめてシンプルであり、適応障害は決して特殊な精神疾患ではない。だが、長期化すれば悪化し、うつ病などの精神疾患になることもある。
この病気の背景にあるのが「職場のストレス」だ。過重労働や転勤、あるいはパワハラなどさまざまな事情がストレスになるが、適応障害の診断・治療において他の精神疾患以上に重要なのが、個別性だという。
著者が診てきた患者を例にとると、かつては生真面目と実直を絵に描いたような「モーレツ社員」ばかりで、仕事に燃え尽きてうつになるケースが多かったという。だが次第に女性が増え、ストレスの内容も上司や同僚との問題、嫌がらせやセクハラといった人間関係に変化していった。
さらに、最近では「働きたくない」「働く意味が分からない」といった若者が増えているそうだ。著者はこんなふうに表現している──「気がつけば、クリニックの待合室は若者と女性でいっぱいです。中高年の『モーレツ社員』は、めっきり見かけなくなってしまいました」。