最新記事

医療

これって適応障害?と思ったら──心療内科医が教えるストレス対処、自宅安静の過ごし方

2020年2月1日(土)17時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Cecilie_Arcurs

<会社で壊れそう、ストレスが大きい、疲れがとれない......。自分の心と体をどう守るか。適応障害になりやすい性格からセルフコントロールの方法まで、適応障害を30年治療してきた医師が伝授する>

「働き方改革」が、2020年4月からいよいよ本格化する。2018年7月に公布された働き方改革関連法は、大企業には2019年4月から適用されているが、今年4月には中小企業にも範囲が広がる。

この法律ができた背景のひとつは、時に自殺につながるなど、職場でのストレスが大きな社会問題になっていること。だが、ひとくちに「職場のストレス」と言っても、それは千差万別だ。仕事そのものが負担になっている人もいれば、対人関係に問題を抱えている人も多い。

かつては「気持ちの問題」として片付けられ、ともすれば「社会人としてなっていない」などと非難されることすらあった。現在では「職場のうつ」は広く認められるようになっており、「適応障害」という名で診断されている。

『もしかして、適応障害?――会社で"壊れそう"と思ったら』(森下克也・著、CCCメディアハウス)は、会社に行きたくない、やる気が出ない、頑張りすぎて疲弊する、休んでも疲れがとれない......そんな悩みを抱える全ての働く人に、心と体を自分で守り、治す方法を伝授してくれる。

自分が適応障害かもしれないと思ったら、どうすればいいか。ストレスにはどう対処するのか。自宅安静を指示されたとき、どう過ごすべきか。そういった「知っておきたいこと」を余すことなく記載した一冊だ。

昔は中高年「モーレツ社員」、最近は女性と若者が多い

著者の森下氏は心療内科医として、約30年にわたって適応障害の治療に当たってきた。その著者によれば、適応障害とは「正常なストレス反応からくる誰にでも起こりうる心身の変化」だ。

嫌なことがあれば落ち込むし、それ自体は正常な反応だが、度が過ぎれば病気として治療が必要になるということ。きわめてシンプルであり、適応障害は決して特殊な精神疾患ではない。だが、長期化すれば悪化し、うつ病などの精神疾患になることもある。

この病気の背景にあるのが「職場のストレス」だ。過重労働や転勤、あるいはパワハラなどさまざまな事情がストレスになるが、適応障害の診断・治療において他の精神疾患以上に重要なのが、個別性だという。

著者が診てきた患者を例にとると、かつては生真面目と実直を絵に描いたような「モーレツ社員」ばかりで、仕事に燃え尽きてうつになるケースが多かったという。だが次第に女性が増え、ストレスの内容も上司や同僚との問題、嫌がらせやセクハラといった人間関係に変化していった。

さらに、最近では「働きたくない」「働く意味が分からない」といった若者が増えているそうだ。著者はこんなふうに表現している──「気がつけば、クリニックの待合室は若者と女性でいっぱいです。中高年の『モーレツ社員』は、めっきり見かけなくなってしまいました」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米食品大手クローガーとアルバートソンズ、合併破談巡

ワールド

ロシア・ウクライナ、黒海・エネ停戦で合意 ロ「制裁

ビジネス

トルコ財務相と中銀総裁、市場安定化に全力注ぐと外国

ワールド

英、ロシアに全面停戦求める 黒海・エネルギー施設攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    【クイズ】トランプ大統領の出身大学は?
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中