NASA有人飛行再開の鍵握る世界初の民間宇宙船 ボーイング・スペースXが熾烈な競争
米テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターに集められた経験豊富な宇宙飛行士とパイロット。米ボーイングが開発中の宇宙船「スターライナー」を使った国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行に向け、訓練を行っている。写真は7月に行われた水中訓練の様子(2019年 ロイター/Mike Blake)
米テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターに集められた経験豊富な宇宙飛行士とパイロット。米ボーイングが開発中の宇宙船「スターライナー」を使った国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行に向け、訓練を行っている。
将来的には一般客の宇宙旅行にも利用される計画のスターライナー。今月打ち上げられる予定だったが、技術的な問題や米航空宇宙局(NASA)上層部の人事異動が重なり、早くとも年末まで延期された。
NASAのスペースシャトル計画が2011年に終了して以降、初となる有人飛行の再開を巡っては、ボーイングのほか、米電気自動車テスラ創業者のイーロン・マスク氏率いる宇宙開発ベンチャー、スペースXが民間企業1番乗りを目指してしのぎを削っている。
最先端の技術を持つ両社は、今後成長が見込まれる世界の宇宙産業の中で最も成功に近い位置にいるとみられている。
NASAは近年、ISSへの人員輸送をロシアのロケットに頼ってきた。総工費1000億ドル(約10兆6000億円)のISSは、地上から400キロ上空を飛行しており、2000年11月以降、宇宙飛行士が交代しながら常時滞在している。
そこでNASAは、ISSへ宇宙飛行士を運ぶ有人カプセル搭載のロケット打ち上げシステムの開発を、スペースXとボーイングに計70億ドルで依頼した。
ロイターは、ジョンソン宇宙センターでISS行きに向けて訓練を行うNASAの宇宙飛行士ニコル・マン氏とマイク・フィンク氏、さらにボーイングの宇宙飛行士でテストパイロットのクリストファー・ファーガソン氏に、異例のインタビューを行った。
彼らはここで、宇宙空間で歩くための水中訓練や、ISSで緊急事態が起きた際の対応、フライトシミュレーターによるドッキングのトレーニングなどに取り組んでいる。
任務を率いるファーガソン氏
自動操縦システムを搭載したボーイングのCST-100スターライナーのプロジェクトを率いるのは、NASAの元宇宙飛行士で、退役米海軍大佐のファーガソン氏(57)だ。
「ボーイングは(宇宙船の)規模や動力の確保については理解していたが、内部や、自動操縦で動く機体と乗員とのインターフェイスについてはあまり考えていなかったようだ」
機内のデザインは簡素化が図られつつ、操縦士が現在地、目的地、その経路を把握したり、予期せぬ事態をどう立て直すか把握してしやすいよう、「大いなる妥協」を盛り込んだという。
2011年にスペースシャトル最後の飛行を率い、通算40日以上を宇宙で過ごしたファーガソン氏は、「結局のところは機体を見極めることに尽きる。変化球を投げてよこさないようにしておきたい」と話した。