最新記事

日本人が知らないマインドフルネス

セックスに悩む女性たちをマインドフルネスが救う?

2017年10月5日(木)11時42分
レア・スルグ

Bjorn Vinter-Uppercut Images/Getty Images


171010cover-150.jpg<ニューズウィーク日本版10月3日発売号(2017年10月10日号)は「日本人が知らないマインドフルネス」特集。企業の研修や医療現場で導入が進んでいるマインドフルネスは、本当に心と体を救うのか。日本ではまだ知られていないその効果をレポート。この特集から、性機能障害の治療法としての有効性に関する記事を転載する>

マインドフルネスは、性機能障害に苦しむ女性にも朗報をもたらすかもしれない。

性的欲求を感じにくい、オーガズムに達しにくい、性交時に痛みがあるといった性機能障害は、年齢や性的指向を問わず多くの女性を悩ませている。パートナーとの関係や生活の質に及ぶ影響は、時に極めて重い。

「イギリス、アメリカ、スウェーデン、オーストラリアの研究によると、女性の35~55%は、強い性的欲求を感じていない」と、ハブロック・クリニック(ロンドン)の臨床心理士カレン・ガーニーは言う。「私たちのクリニックを受診する女性には、挿入を伴う性交の際の痛みと性欲の減退を訴える人が特に多い」

これまで性機能障害の治療法として最もよく知られてきたのは、認知行動療法だろう。患者自身の物事の捉え方を見直し、変えていく療法であり、具体的には心理面の教育、コミュニケーションやリラクゼーションのためのトレーニング、専門家の指導の下でのマスターベーションなどが行われる。

「性機能障害の原因は、心理的なものもあれば、生理的なものもある」と、カップルの関係改善を支援するイギリスの団体「リレート」のセックスセラピスト、ピーター・サディントンは言う。「認知行動療法は、患者が自分の陥っているパターンを把握し、過去の経験がどのような影響を及ぼしているかを知る手助けになる場合が多い。治療効果はかなりある」

しかし、その効果がデータによって十分に裏付けられているとは言えないとの指摘もある。臨床試験の多くは被験者数が非常に少なく、追跡調査の期間も短い。しかも一部の実験では、半数以上の患者に症状の際立った改善が見られていないのだ。有効性を断定するには、まだデータを集める必要がありそうだ。

そうしたなかで、セラピストが女性たちを救うために使える選択肢を増やせるように、新しいアプローチを模索することの意義は大きい。そんな新しい治療法の1つとして脚光を浴びつつあるのが、この15年ほどの間に用いられるようになったマインドフルネスに基づく治療法(MBT)だ。

MBTの特徴は、患者が自分の現時点の思考と感情を受け入れるように促すことにある。患者の思考を直接組み換えることを目指す場合が多い認知行動療法とは、この点で異なるものだ。

【参考記事】科学者が注目する「マインドフルネス」の本当の効果

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 6

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 9

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中