オキュラスリフトで未来をのぞく
待望のVRヘッドセットに「高い」との嘆き。だが新しい技術には値段に見合う意味がある
600ドルで見る夢 開発キットの段階から、映像の中に入り込むような新感覚と迫力が話題に COURTESY OCULUS VR
あと2年もすれば、誰もがバーチャルリアリティー(仮想現実)のヘッドセットをかぶって街を歩いているのだろうか。それとも仮想現実は、仮想のまま終わるのだろうか。
オキュラスVRが発表したヘッドセット「オキュラスリフト」(以下リフト)をめぐる騒ぎからは、バーチャルリアリティーの別の未来が見えてくる。消費者向けのIT製品で、正式販売の前にこれほど派手な宣伝と反発が入り乱れた例はなかったのではないか(いや、眼鏡型ウエアラブル端末の「グーグルグラス」もそう言えば......)。
1月6日、リフトの製品版の予約販売がついに始まった。価格は予想をはるかに上回る599ドル。ヘッドホンとマイクを内蔵したヘッドセット本体、卓上センサー、リモコンのオキュラスリモート、家庭用ゲーム機Xbox Oneのコントローラーが付属する。
2年間待ちわびたゲーマーには、いささか衝撃的な価格だ。先に発売されていた開発者向けのDK1は300ドル、DK2は350ドル。テクノロジーニュースサイト「ザ・バージ」のアディ・ロバートソンが指摘するように、低価格こそリフトを画期的な製品にする大きな要因のはずだ。
動作に必要なハードウエアを考えると、さらに手が届きにくいだろう。スマートフォンやノートパソコンでは力不足。高性能のグラフィクスカードを搭載したハイスペックなデスクトップパソコンが必要で、あれこれそろえると最高2000ドルほど掛かりそうだ。
予約ページには、動作環境を簡単に確認できるツールもある。2月には推奨環境を満たすマシン「オキュラスレディーPC」の予約受け付けが始まる。リフトとセットで1499ドル~だ。
言葉にできない体験を
リフトは確かに高価だ。14年に20億ドルでオキュラスVRを買収したフェイスブックは、世間の期待をもう少し和らげておくこともできただろう。しかし、ゲーマーの怒りは見当違いだ。
新しい技術は、最初は値が張るものだ。市場もサプライチェーンも存在しない製品の設計や試験、製造にはカネが掛かる。
オキュラスVRの創業者パルマ・ラッキーは、リフトが複雑で強力なデバイスであることを考えれば、決して高くないと反論する。600ドルでも「ハードウエアで儲けはない」。
新製品が期待に応えるものであれば、初期の高価格も長期的には成功の妨げにならないだろう。いち早く購入したい人々は喜んでカネを払い、一般の消費者が手を出せる価格に落ち着くまで羨望の的になれる。