最新記事

バーチャルリアリティー

オキュラスリフトで未来をのぞく

待望のVRヘッドセットに「高い」との嘆き。だが新しい技術には値段に見合う意味がある

2016年1月25日(月)17時00分
ウィル・オリマス

600ドルで見る夢 開発キットの段階から、映像の中に入り込むような新感覚と迫力が話題に COURTESY OCULUS VR

 あと2年もすれば、誰もがバーチャルリアリティー(仮想現実)のヘッドセットをかぶって街を歩いているのだろうか。それとも仮想現実は、仮想のまま終わるのだろうか。

 オキュラスVRが発表したヘッドセット「オキュラスリフト」(以下リフト)をめぐる騒ぎからは、バーチャルリアリティーの別の未来が見えてくる。消費者向けのIT製品で、正式販売の前にこれほど派手な宣伝と反発が入り乱れた例はなかったのではないか(いや、眼鏡型ウエアラブル端末の「グーグルグラス」もそう言えば......)。

 1月6日、リフトの製品版の予約販売がついに始まった。価格は予想をはるかに上回る599ドル。ヘッドホンとマイクを内蔵したヘッドセット本体、卓上センサー、リモコンのオキュラスリモート、家庭用ゲーム機Xbox Oneのコントローラーが付属する。

 2年間待ちわびたゲーマーには、いささか衝撃的な価格だ。先に発売されていた開発者向けのDK1は300ドル、DK2は350ドル。テクノロジーニュースサイト「ザ・バージ」のアディ・ロバートソンが指摘するように、低価格こそリフトを画期的な製品にする大きな要因のはずだ。

 動作に必要なハードウエアを考えると、さらに手が届きにくいだろう。スマートフォンやノートパソコンでは力不足。高性能のグラフィクスカードを搭載したハイスペックなデスクトップパソコンが必要で、あれこれそろえると最高2000ドルほど掛かりそうだ。

 予約ページには、動作環境を簡単に確認できるツールもある。2月には推奨環境を満たすマシン「オキュラスレディーPC」の予約受け付けが始まる。リフトとセットで1499ドル~だ。

言葉にできない体験を

 リフトは確かに高価だ。14年に20億ドルでオキュラスVRを買収したフェイスブックは、世間の期待をもう少し和らげておくこともできただろう。しかし、ゲーマーの怒りは見当違いだ。

 新しい技術は、最初は値が張るものだ。市場もサプライチェーンも存在しない製品の設計や試験、製造にはカネが掛かる。

 オキュラスVRの創業者パルマ・ラッキーは、リフトが複雑で強力なデバイスであることを考えれば、決して高くないと反論する。600ドルでも「ハードウエアで儲けはない」。

 新製品が期待に応えるものであれば、初期の高価格も長期的には成功の妨げにならないだろう。いち早く購入したい人々は喜んでカネを払い、一般の消費者が手を出せる価格に落ち着くまで羨望の的になれる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イーライ・リリーの経口減量薬、オゼンピックと同等の

ワールド

トランプ政権、ガザ訪問歴ある米国ビザ申請者のSNS

ビジネス

円債を1100億円積み増し、日銀の利上げ年度内2回

ビジネス

対米貿易摩擦、解決できなければ欧州委が責任を=仏L
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 7
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    関税を擁護していたくせに...トランプの太鼓持ち・米…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中