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母親代行テクノロジーに家事はお任せ!

2016年1月5日(火)17時10分
ケビン・メイニー

 それぞれの国が最も得意とする経済活動を行い、最も優れた製品やサービスを輸出すれば、すべての国の生産性が向上し、より高品質のものを割安で手に入れられる。これが比較優位の基本的な考え方だ。すべての国が自分の最も得意な経済活動と貿易に専念すれば、すべての国の生活の質が向上する。

 家事代行サービス業の創業者たちは、自分の面倒を省きたいと思っただけかもしれない。しかし彼らは、自分が最も得意なことだけをやり、それ以外のことはそれが得意な人に外注するという仕組みを築いている。

 裏を返せば、最も得意なことを他人のためにやってカネを稼ぎ、そのカネで最も優れたサービスを買う。リカードによれば、この大きなサイクルがすべての人の生活を向上させる。

AI家政婦ロボも登場か

 家事代行サービスのスタートアップが最も多いアメリカは、20代の人口がかなり多い。つまり、母親代行ビジネスがカネを生む市場を見つけやすく、実家を出たばかりの独身者という大きな牽引力がある。

 この年代も10年後には大半が結婚して子供を持ち、ローンを組んで家を買い、優先順位ががらりと変わるだろう。そのとき彼らは、ワシオのような便利さを手放すだろうか。

 断じてそんなことはない。生まれたときから食洗機があった世代が、食洗機のない家を買うだろうか。新しい便利さを経験しながら大人になれば、生涯その便利さを必要とする。レシピに合わせて新鮮な食材と計量済みの調味料が宅配される「ブルーエプロン」に慣れ親しんだ人々は、毎晩メニューに頭を悩ませる生活には戻らない。

 さらに、今後数十年で人工知能(AI)が家事代行サービスの基盤になれば、人の手を借りる必要もなくなる。自動運転車が子供を送迎し、AI家庭教師が宿題を手伝う。家事のやり方を機械学習した「AIロージー」も夢ではなさそうだ。

 そこまでくれば、ロボットママの実現も時間の問題だろう。そして、時代は一周して元に戻る。疲れを知らないロボットママたちは「自分のことは自分でやりなさい」と永遠に繰り返すだろう。

[2015年12月22日号掲載]

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