水危機の救世主? 空気から水を生む「穴だらけ素材」の実力
Water From the Air

「MOFの世紀」が始まる...水もCO₂も吸収する新素材の衝撃 Atoco
<深刻化するばかりの世界の水問題、救世主は穴だらけの新材料かもしれない>
「網目状構造化学」という材料科学の新分野が、世界の水不足危機の救世主になるかもしれない。このテクノロジーにより、水量が減り続けている貯水池などの水源への依存を軽減できる可能性がある。
具体的には、「金属有機構造体(MOF)」および「共有結合性有機構造体(COF)」と呼ばれる多孔性の新材料を使って、大気中の水蒸気を効率的に吸収させようというのだ。これらの新材料の特徴は、内部の表面積が極めて大きいこと。ティースプーン1杯分のMOFの粒子があれば、サッカー競技場の広さに匹敵する。
「内部の表面積が外部の表面積に比べてはるかに大きい。粒子にごく小さい穴をいくつも開けると、その粒子の表面積が増えるからだ」と、30年以上前に網目状構造化学の分野を切り開いた先駆者であるカリフォルニア大学バークレー校のオマー・ヤギー教授(化学)は本誌に語っている。
ヤギーが立ち上げたアトコ社は、このような新素材を使って大気水採取(AWH)の実現を目指す動きの先頭を走っている。
「空気には大量の水が含まれている。その量は世界の地表水の7倍に上る」と、アトコのサメール・タハCEOは本誌に語っている。「しかも、これは持続可能性のある水源だ。放っておいても自動的に充塡される」
同社は昨秋、ラスベガスで開かれた「ウォータースマート・イノベーションズ」というイベントで、画期的なAWHテクノロジーを発表した。