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「自分にできることを...」JICA職員・林 研吾さんが蟹江研究室で培ったSDGsの視点

2025年3月4日(火)13時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
蟹江研究室の卒業生で現JICA職員の林 研吾さん

蟹江研究室の卒業生で現JICA職員の林 研吾さん


SDGs(持続可能な開発目標)は、世界が直面する課題を解決し、より良い未来を築くための指針として掲げられている。しかし、その理念をどのように自分ごととして捉え、実際の行動につなげるかは、人それぞれの経験や環境によって異なるだろう。

慶應義塾大学・蟹江憲史研究室の卒業生で、現在、JICA(国際協力機構)にて教育事業等を中心に国際協力に携わる林 研吾さんも、その道を模索しながら歩んできた一人だ。幼少期を内戦中のスリランカで過ごし、ラグビーなどを通じて多様な文化に触れ、大学ではSDGsを専門的に学んだ林さん。彼がどのようにしてSDGsへの関心を深め、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として開発途上国への国際協力を行っているJICAでの活動につなげていったのか。本記事では、その経緯や学び、そして若者たちへのメッセージを紹介する。

──SDGsに興味を持ったきっかけは?

いくつかのきっかけがありますが、一つは幼少期の経験です。私は内戦中のスリランカで幼少期を過ごしました。当時の記憶はほとんどありませんが、市役所へのロケット攻撃や空襲、バスの爆破といった出来事について聞かされていました。その影響で、テレビのドキュメンタリーなどを通じて、自分が住んでいた国や世界に対する関心が自然と芽生えました。また、スマトラ島沖地震でスリランカも被害を受けたことがあり、国際的な課題に目を向けるようになりました。

加えて、私が小学生の頃に通っていた塾で、環境問題や地球の持続可能性について学んだことからも大きな影響を受けています。その授業は写真や具体的な事例を通じて、未来について考えるもので、小学生の頃から未来についてよく考えるきっかけとなりました。また、3歳からラグビーを始め、高校時代には7人制ラグビーの世界大会である「東京セブンズ」で南アフリカ代表との交流、大学時代にはイギリス留学時でのラグビー部の活動など多くの国の選手たちと触れ合う機会がありました。こうした経験を通じて、国際的な視点がさらに広がりました。

大学受験の頃は、MDGs(ミレニアム開発目標)が終了するタイミングで、SDGsの合意がされる直前でした。この頃から、国際的な目標に世界が一体となって取り組む意義について興味を持つようになりました。日本におけるSDGsの第一人者である蟹江先生の授業では、「未来に向けた目標を立て、それをバックキャスティングして今何をすべきかを考える」という考え方を学びました。この考え方は、高校時代にラグビーで全国大会に向けて「いつまでになにをするか」と具体的な目標を立てていた経験にも通じるものでした。

こうした多様な経験が重なり、「SDGsについてもっと学びたい、取り組みたい」という思いが強まっていきました。

──蟹江研究室での研究内容は?

蟹江研究室には2年生から所属し、いくつかのプロジェクトに関わりました。例えば、沖縄県読谷村の持続可能性に関する研究や、無印良品(良品計画株式会社)のSDGsにおける役割を分析する研究に取り組みました。具体的には、企業がどのように持続可能性を組織内で実現し、社会に貢献するかを考える内容でした。

また、3年生の時には、ゼミ長としてリーダーシップを発揮する機会もいただきました。さらに、国連のSDGsハイレベル政治フォーラム(HLPF)に参加し、国際的なディスカッションに加わる機会もありました。これらの経験を通じて、多様な視点で課題に取り組む姿勢を学ぶことができました。

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