「なぜサステナビリティが必要なのか」を語れる力を育てる...和田 恵さんが学生に贈るSDGsキャリア成功の秘訣
──今後の目標を教えてください。
社会に出てからは、SDGsをふまえるとやるべきではあるが、そう簡単には変えられない現実も目の当たりにしました。例えば、「旧来型の石炭火力発電はCO2を多く排出しているから世界で廃止すべき」という意見がある一方で、雇用であったりエネルギー安全保障の面から見たら即時移行は非現実的です。現在の経済の尺度からみたら、利益を犠牲にした環境対応は非合理的な選択となってしまいます。とはいえ「仕方がない」で終わらせないように、意思決定の場に若者の声を入れることは重要だと思っています。少し厳しい言い方をすると、上の世代は無意識に「自分たちは逃げ切れる」というマインドを持つ人が少なくないからです。
政府のSDGs実施指針改定にあわせて、民間企業や自治体、市民社会などがSDGsの実施状況や先進事例を共有し新指針にインプットするためのステークホルダーズ・ミーティングが開催されます。発言者の大半は中高年男性でしたが、2019年に参加した際、意外にも高校生や大学生の参加者がいることに気付きました。「この中に若者がいたら手を挙げてください」「こうした若者の視点も大事にしてください」と発言したら、思いがけず拍手喝采が起きて。その後、会議中に「若者」という言葉が増えたのが印象的でした。
この経験から、若者の存在が視界に入るだけでも意識が変わり、政策が未来志向へとシフトする可能性があると感じました。「子どもに格好悪い背中は見せられない」といった意識が刺激されるのかもしれません。自分にどこまでできるかはわかりませんが、長期的な視点に基づいた政策や経営が実行されるために、経済的合理性の定義から変えていく努力はしていきたいですね。近年では、経済成長の尺度に環境や社会の観点を盛り込む動きが広がっています。
──SDGs関連の仕事を目指す学生に向けて、メッセージをお願いします。
私が学生時代に特に苦労したのが、サステナビリティを重要視していない人に対して「なぜSDGsに取り組むべきなのか」と話して納得いただくことです。私が「やっておけばよかった」と思っているのが、サステナビリティがなぜ必要なのかを自分の言葉で語れるようになること。一口にSDGsと言っても、思い描く理想の社会は人それぞれ違うはずなので、SDGsがなぜ必要なのかをきちんと自分の言葉に落とし込んで、思いを込めて相手に伝えないと、人の共感は得られません。就職活動の面接で、自分の考えを伝える上でも大切なことだと思います。
また、私は社会人になってから経営学を学び、それまで疑問に思っていた組織の意思決定のメカニズムが腑に落ちました。サステナビリティの勉強も大事ですが、そこから幅を広げ、ファイナンスや財務の知識を通じて今の社会が動いている仕組みがわかると、より見識を深めることができると思います。

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