最新記事
インタビュー

トランプ「反・気候変動」時代到来で思い出すべき、京都議定書での日本の過ち──蟹江憲史教授

2024年12月27日(金)15時15分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授

SDGsの研究と実践の両立を図ってきた慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授(2023年撮影) Photo:遠藤 宏

蟹江 本当にパリ協定から離脱することがアメリカの利益になるのか。そこは(トランプ次期大統領も)考えるのではないか。そして絶対に、アメリカの利益にならないと思う。

離脱してしまうと、カーボンマーケット(CO2排出削減量を取引する市場)から資金拠出、貿易まで、パリ協定の下でのルールメイキングに参加できなくなる。そうすると、4年間は石油を掘りまくって生き延びるかもしれないが、(次期政権の終わる)4年後にふたを開けたとき、アメリカに不利な状況になっているだろう。

中国も、アメリカがパリ協定から抜けてくれたら喜ぶはず。アメリカ経済にとって長期的に大きな損失になる。そうした意味でも、次の4年間に事態がどう進行するのかは非常に興味深い。

おそらく中国がこれから、いろいろなスタンダード(標準化)を狙っていくだろう。中国とヨーロッパが脱炭素の主導権を争う。その中で、もしアメリカがいなくなるとすれば、日本にもチャンスが回ってくると思う。

2001年にブッシュ米政権が京都議定書の枠組みから離脱したとき、日本もアメリカに倣って、サボタージュというか、その後、「京都」の名前の付いた国際合意にもかかわらず、これを推進しようとはしなかった。私は当時「これはまずい、このままだとせっかく出てきた日本の低炭素技術が他国に追い抜かれ、『うさぎとかめ』のうさぎになってしまう」と言っていたのだが、案の定、2000年代に中国とヨーロッパが開発を進め、例えば太陽光発電の市場は中国が取ってしまった。

世界の流れはもう決まっている。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気候変動と人間活動との関係には疑う余地はないと言っている。トランプ氏が本気で疑っているのか、疑うふりをしているのかは分からないが。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

国内超長期債の増加幅は100億円程度、金利上昇で抑

ワールド

ウクライナ、中国企業3社を制裁リストに追加

ワールド

トランプ米大統領の優先事項「はっきりしてきた」=赤

ワールド

イスラエル、ガザで40カ所空爆 少なくとも30人死
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 6
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 7
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 8
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中