7時間以上を家事や介護に費やす中学生も...日本イーライリリーが挑む「ヤングケアラー支援」
子どもらしい時間を過ごせぬままに、悩むヤングケアラーの厳しい現実(写真はイメージです) kitsune05-Shutterstock
<子どもらしい時間と引き換えに、家事や介護を担う子どもたち。日本イーライリリー株式会社は、製薬企業としての使命感から「ヤングケアラー」への支援活動を展開している>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
大人の役割を背負う「ヤングケアラー」が直面する現実
晩婚化、核家族化、離婚率の上昇、そして経済的困難。これらの社会変化が絡み合う中で、「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたちを取り巻く環境が社会問題として注目を集めている。「ヤングケアラー」とは、本来、大人が担うべき家事や介護を日常的に担い、重い責任を負わされている子どもたちのことだ。
厚生労働省の調査によると、「家族の世話をしている」と答えた中学2年生の11.6%が、毎日「7時間以上」を家事や介護に費やしている。
ヤングケアラーが直面する問題は多岐にわたる。学び、遊び、休息といった子どもらしい時間が奪われることで、心身の健康が損なわれる。さらに、家庭内の事情から外部の目に触れにくく、ヤングケアラー自身が自分を助けが必要な存在と認識していないことも少なくない。その結果、支援が行き届かず、社会的に孤立しやすい状況に置かれることが指摘されている。
こうした状況を打破し、ヤングケアラーへの理解を深め、その環境を改善するために日本イーライリリー株式会社は立ち上がった。同社は「ヤングケアラーを取り巻く環境改善プロジェクト」に取り組み、SDGs達成に向けた社会的責任を果たそうとしている。
イーライリリー・アンド・カンパニーは150年近くの歴史を持ち、世界で初めてインスリン製剤を実用化したグローバル製薬企業だ。その日本法人である日本イーライリリーは、米国本社に次ぐ規模を誇り、国内製薬企業の中でも成長を続けている。
同社は2022年から「認知向上」「支援強化」「情報提供」の三本柱を掲げ、ヤングケアラーを取り巻く環境の改善を目指して支援を推進している。映画の上映会、公開講座、パネルディスカッションを通じてヤングケアラーの現状を広く伝えるとともに、シモーネ・トムセン社⾧をはじめとする社員有志によるチャリティ活動や、社会見学先の紹介など多方面で支援団体をサポート。さらに、子どもたちが自由な時間を楽しみ、将来を思い描けるようにするための本を、全国の子ども食堂や児童館に寄贈している。
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