廃棄される「鱧(ハモ)の皮」からコラーゲンを抽出...再春館製薬所「ドモホルンリンクル」は驚くほどサステナブル
「ドモホルンリンクル」では、鱧の皮から抽出した海洋性コラーゲンを使用している
<コラーゲンを含む基礎化粧品「ドモホルンリンクル」で知られる再春館製薬所。より良いコラーゲンを追究し続ける同社は、環境に配慮した意外な原料で最新のコラーゲンを開発した>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
海外で廃棄されていた鱧の皮をコラーゲンとして再利用
株式会社再春館製薬所の主力製品である「ドモホルンリンクル」は、1974年に日本初(*1)のコラーゲン(*2)を配合した基礎化粧品として発売された。以来、同社は最良のコラーゲンを生み出すべく、原料からこだわって改良を続けている。
「自然とつながり、人とつながる明日を」という理念を掲げ、原料の選定においても環境への配慮を徹底している。それを踏まえて開発されたのが、廃棄される大量の鱧(ハモ)の皮を活用した「鱧コラーゲン」だ。
ドモホルンリンクルに配合されるコラーゲンは、以前はドイツの医療品原料メーカーの牛由来コラーゲンを使用していた。しかし、2001年に狂牛病(BSE)問題が起こり、使用していた原料は安全面に問題はなかったものの、顧客の不安を考慮して牛由来の原料は即座に使用を中止した。
動物性由来原料を廃止し、魚から抽出する海洋性コラーゲンに変更することを決めた同社は、まずは鯛(タイ)のうろこに注目。
元来は捨てられていたうろこから良質なコラーゲンが取れることが判明したが、うろこの硬さがネックになった。硬いうろこからコラーゲンを抽出するためには薬剤を使う必要があったほか作業負担が大きく、それがコラーゲンの質の低下につながりかねなかった。
より安心できる、持続可能なコラーゲンとは何か? 世界中から原料を取り寄せ、研究を重ねる中で、最も高い保湿効果を得ることを確認できたのが、天然鱧の皮から抽出した海洋性コラーゲンだった。
鱧のコラーゲンは人の肌へのなじみもよく保湿力が高いうえ、作業負担も高くなく、質を保つことができ、原料としては申し分ない。だが、新たな課題が立ちはだかった。
鱧は国内では高級魚として皮まで余すことなく食べられ、しかも漁獲高が減る一方であったため、これを使い続けることは現実的とは言い難かったのだ。
そうした中で出会ったのがタイのアンダマン海に棲息する、体長1メートルにも及ぶ大きな種類の鱧。アンダマン海は肥沃な海で、ここで獲れる鱧は皮にも良質なコラーゲンを大量に蓄えている。さらに、現地ではすり身加工が主流のため、大量の皮が廃棄されていた。
「当社のあらゆる活動の根底には『自然・社会との共存』が念頭にあります。廃棄されるものがあればそれを積極的に活用するということも、ずっと心がけてきたことでした。従来よりも肌に良い品質、豊かな環境で育つ持続可能な素材、廃棄されるものの活用と、私たちにとってすべての条件が揃った理想の原料だったのです」と研究開発・新規事業開発部の副部門長 鴛海央氏は話す。