脱プラスチックに向けて、高品質な代替品を提供...「紙」を起点にSXの推進に取り組むエステックの信念
企業と社会、環境の持続性を並立させて、よりよい未来に貢献したい
エステックでは、紙製歯ブラシのほかにも紙製コームや紙製靴べら、紙製スプーン・フォーク・ナイフなどの開発を行っているが、紙製品の実用化までには乗り越えるべき課題が2つあったという。
まず1つめは、紙製品にプラスチック製品と同等の耐久性を持たせるための技術的な課題だ。これについては、材料やプレス加工時の圧力などを細かく研究し、試作を重ねることで「水に弱い」という弱点を克服。3〜4回の使用に耐えうる強度を実現した。
2つめの課題は市場受容性、つまり消費者がプラスチック製品から紙製品へと移行する際の心理的障壁だ。同社はこの課題をクリアするため、宿泊施設や空港、ゴルフ場、レジャー施設などに紙製品の導入を提案。
「脱プラスチック」を掲げていたJALグループとパートナーシップを結び、羽田空港、成田空港のJALラウンジに紙製歯ブラシを置くことで、環境メリットや使用感、機能性のアピールに成功している。
こうした取り組みについて、大村氏は「認知を広げるよい機会になった」と振り返るが、実は他企業と連携した背景には、別の狙いもあったと話す。
「製品を提供するにあたっては、パートナーとなる企業のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を支援し、ともに持続可能な未来を築いていきたいという強い思いがありました。それが自社を含めた、社会全体の豊かな発展につながると考えているからです」(大村氏)
企業と社会の持続性、そして環境の持続性を並立させ、よりよい未来に貢献したい----。その信念は、環境意識の高い企業や施設の共感を呼び、現在は下田蓮台寺温泉 清流荘、ホテル・モクシー東京錦糸町といった宿泊施設でも、紙製アメニティの導入が始まっている。
2025年以降は、北米とヨーロッパに販売拠点を設立し、さらなる技術革新と市場の拡大を目指すというが、それらの地域でも「脱プラスチック」は喫緊の課題。環境負荷の軽減を迫られる他国の企業にとっても、エステックは心強いパートナーになるはずだ。
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