スクールバスの未来はEVにあり...「EVは儲からない」を覆すブルーバードの快進撃
Schooling the EV Skeptics
スクールバスのEV化がブルーバード快進撃の原動力になっている BLUE BIRD
<「EVは儲からない」という懐疑論を蹴散らし、株価爆上がりの自動車メーカー・ブルーバード。スクールバスにEVが向いている理由とは>
電気自動車(EV)メーカーにとって、この1年は厳しいものだった。EVの販売台数は総じて増加傾向にあるものの、EV大手のテスラも新興のリビアン・オートモーティブも株価下落を受けて、人員削減を発表した。
その一方で、絶好調のメーカーがある。米ジョージア州に本社を置くブルーバードだ。同社は長年、黄色いスクールバスを全米の学校に供給してきたが、近年はそのEV化を進め、株価は今年に入り100%超の上昇を見せている。
1927年の創業から間もなく100年を迎えるブルーバードは、本誌の「アメリカで最も信頼できる企業」と「世界で最も信頼できる企業」にランキングされる優良企業だ。その主力製品であるスクールバスの外観は長年ほとんど変わっていないが、生産体制や細かな部分ではさまざまな変更を加えてきた。
例えば、EVスクールバスの生産能力を拡大するとともに、最近では座席に3点式シートベルトを完備したり、運転席にエアバッグを完備する(どちらも業界初)など安全措措置の強化を発表した。
また、ブルーバードの従業員は2023年、投票により組合への加入を決定。現在、約2000人の従業員のうち約1500人がUSW(全米鉄鋼労働組合)に加入している。今年5月には、組合と会社側は大幅な賃上げと福利厚生の拡充で合意した。
企業経営の常識では、安全機能の強化や賃上げはコスト増大を意味し、先行きに不透明感のあるEV市場に参入するに当たり、競争力を低下させる措置と受け止められがちだ。だが、ブルーバードはこうした懐疑論をものともせず、全米トップの業績を誇るEVメーカーに成長した。
「ブルーバードは、EV事業は依然として利益になることを示した」と、ブリトン・スミス社長は胸を張る。「しかもそれを、販売する全てのバスで実現している」
スミスによると、ブルーバードは年間5000台のEVを生産できる新工場と、トラック市場向けのEVシャーシラインを新設することにより、EV事業を一段と拡大する計画だ。今夏中に、2000台目のEVスクールバスを納車する。
ブルーバードのEVシフトは、米政府が進めるクリーンカー(走行時に二酸化炭素等の排ガスを出さない車)の普及推進策の恩恵を大いに受けていることでも全米の注目を集めてきた。
21年にジョー・バイデン大統領が署名して成立した超党派のインフラ投資法は、5年間で総額1兆ドルを支出して、全米の老朽化したインフラを刷新しようというもの。これを受け、環境保護局(EPA)は計50億ドルを交付して、既存のスクールバスをEVスクールバスに切り替える「クリーンスクールバス・プログラム」を立ち上げた。