ウーバーと組む自動車大手の「EV実験」...テスラと異なる「ネットワーク外部性」戦略の勝算は?
A NEW EV PUSH
ドライバーのEVシフトを促すため、8億ドル規模の支援制度も導入した。EVの運転者は、1回の走行ごとに報奨金1ドル(年間最高額4000ドル)を受け取ることができる。
「マッハEは最大5人が乗車可能で、収納スペースも豊富だ。家族連れでもギグワーカーでも、さまざまに異なるニーズを持つ数多くの顧客に対応できる」と、ナップは話す。
フォードはEV生産拡大を方針に掲げ、26年末までに年間生産台数を200万台に増やす予定だ。
ウーバーの強さは、グーグルやアマゾンなど基盤的サービスを提供するプラットフォーマーと同じく「ネットワーク効果(ネットワーク外部性)」にある。ウーバーのドライバーが多いほどサービスを使う消費者も多くなり、サービスは変わらないのにウーバーを利用する価値はどんどん高まる。そして結果的に繰り返しの利用や利用者の定着にもつながる。EV大手のテスラは直販でしか自社製品を売らないが、それに対してウーバーのネットワーク効果を使って自社のEVの利用増を狙ったことに今回のフォードの戦略の面白さがある。うまくハマればEV事業が赤字に見舞われているフォードはマッハEを普及させられるだろう。EV利用がネットワーク効果で増えれば当然その分、CO2排出減にも貢献する。
――解説:入山章栄(早稲田大学大学院経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクール教授)