環境配慮型資材の利用、地域へのSDGs啓蒙 研文社が体現する「情報発信業」としての印刷
尼崎工場では、地元の中学生を見学に招いている
<工場はすべて再生可能エネルギーで稼働。CO2 排出量の「見える化」を実現した「環境配慮型プリント」とは?>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
紙の生産が森林破壊の要因の一つになっていることやデジタルシフトが進んでいることから、製紙・印刷業界への逆風が強まっている。そんななか、総合印刷会社である株式会社研文社の環境に配慮した事業運営やSDGsを推進する活動が注目を浴びている。
FSC認証紙など環境配慮型資材を積極的に活用
ペーパーレス化やDXの加速によって紙の需要が減りつつある。また、世界的に脱炭素化の機運が高まっている中で森林資源を主要資材としていることや、印刷プロセスで二酸化炭素を排出することなどから、製紙・印刷業界は厳しい時代を迎えている。
こうした現実を直視した上で、印刷業の可能性を信じて活動しているのが株式会社研文社だ。同社は長年、環境に配慮したさまざまな取り組みを行ってきた。
なかでも特筆すべきなのが、FSC認証紙に代表される環境配慮型資材の積極的活用とリサイクルの推進だ。
FSC認証とは、国際的な非営利団体FSC(森林管理協議会)が定めた持続可能な社会の実現を目指す森林認証制度のこと。印刷会社はFSC認証紙を使用することで、森林の適切な管理に貢献することができる。なおFSC認証紙は、日本印刷産業連合会(日印産連)が環境経営に積極的な印刷関連企業を認定するGP(グリーンプリンティング)認定の認証資材でもある。
同社の工場はすべて再生可能エネルギーで稼働しており、そこで印刷される印刷物を「環境配慮型プリント」としている。製品単位でのCO2排出量とその算出値の明確な根拠を明示していることが特長だ。
また、紙・プラスチックの代替になり、日本でも自給自足可能な石灰石を主原料とする「LIMEX(ライメックス)」や、ザンビアで廃棄されるだけだったオーガニックバナナの茎から取ったバナナ繊維を日本の和紙技術で紙にした「バナナペーパー」など、「サステナブルペーパー」の分野にも注力している。