最新記事
SDGs

世界一幸福な国フィンランドは幼稚園から温暖化対策を学ぶ 環境・気候大臣が語る「教育と気候変動対策」

2023年10月25日(水)16時30分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

気候変動について、13~15歳の女子5人の意見を聞くこともできた。みな、気候変動のことは日常生活のなかで常に考えたり、友だち同士で話題にしたりしているという。具体的に取り組んでいるアクションについても聞かせてもらったが、そのうち、ファッションの消費について5人は次のような意見を話してくれた。

●ミン 
私の母は洋服を直してくれたり、ウォールポケットなどにアップサイクル(廃棄物や不要品を新しいものに作り変え、価値を高めること)してくれるので、それが私のスタイルになっている。

●エンミ 
衣類は最小限で、あまり買わない。必要なときだけ買うというポリシーをもっている。

●アヤ 
母の友だちは裁縫が得意。その人に頼んで、着なくなった衣類をアップサイクルしてもらっている。

●ラフ
ファッションが大好きなので、買い物はよくするほう。でも可愛いいデザインであっても、長く使えず、環境に悪いことが容易に想像できれば買わない。

●サンリ  
衣類はあまり買わない。値段が少し高めでも良い品質なら長持ちするので、そういうものを買う。例えば今日履いている靴は本革で、使えなくなるまで使うつもり。

10代はファッションへの関心が高まる時期だと思うが、温暖化に配慮した消費行動が身に付いているようで感心した。省エネや脱プラスチックの点でも、5人とも日常的に行動に移していると話してくれた。

模範的な実践をしている5人を集めたのかもしれないと一瞬思ったが、おそらく違う。同校はユネスコスクール加盟校(人権や民主主義を促進したり、異文化理解を進める)であり、ウェルビーイング(幸福な状態)について教えたり、2007年から子ども自身が校内で環境活動を推進していたりと、優れた教育を実践している。同校の子どもたちは授業で環境について学び、授業以外でも環境保護、そしてSDGsの達成につながる行動ができるように育っているのだと推測する。

学校を通して「環境を自分ごととして考える」ようになっていることが、社会に出て働いたときの「環境を重視した企業活動」へとつながっていくのだろう。この学校は一例に過ぎない。ミュッカネン環境・気候大臣が「国民一丸で、気候変動のための変革に貢献する」という学校教育の成果は、確実に表れているのだと思う。

今回のヘルシンキでの視察は、意義深い経験だった。


s-iwasawa01.jpg[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中