最新記事
SDGs

世界一幸福な国は2035年カーボンニュートラル達成へまい進 社会変革を目指すフィンランドのスタートアップ企業

2023年10月16日(月)17時20分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)
木の繊維から作った新繊維「SPINNOVA」とマリメッコのコラボ製品

フィンランドの人気ブランド、マリメッコは、木の繊維から作った新繊維「SPINNOVA」とのコラボシリーズを販売。SPINNOVAは1㎏の原料が1㎏の繊維になり廃棄物ゼロ、有害な化学物質ゼロ。©SPINNOVA

<ノキアを筆頭にマリメッコ、イッタラといったデザイン性の高い製品を作る企業が有名なフィンランドだが、温暖化対策でも世界をリードしようとしている>

世界一早く、「2035年までのカーボンニュートラル達成」を目指すフィンランド。気候変動解決策をテーマにした視察ツアーでは、カーボンニュートラル達成に向け、日用品、食料品、衣料品と、生活に必要な品物でイノベーションを起こしている企業を訪問した。今回は、ヘルシンキ発の革新的な製品や素材について紹介する。フィンランドでの社会変革の様子を感じ取っていただこう。

関連記事:世界一幸福な国はSDGsでも達成度1位 フィンランド、気候変動対策へ行政の取り組みは?

リサイクル前提に、見た目は今まで通りの代替プラのパッケージ

世界的な課題となっている脱プラスチック。日本でのプラスチックリサイクルの現状は、燃料用に焼却されるプラスチックを除外すると、プラスチックの再生率は27%となっている。だがフィンランドでは、再びプラスチックに戻る割合は39.4%(2020年)だ。以下の2社は代替プラスチックを製造し、この割合を高めようとしている。

「ウッドリー」を使った製品や試作品

「ウッドリー」を使った製品や試作品。食器洗浄機で使用可。「ウッドリー包装は食品が長持ちする」というレストランチェーンからの声が届いており、食品廃棄減少にも貢献できそうだ。*本記事の写真はクレジット表記のないものはすべて筆者撮影/サンドイッチの画像© Woodly

ウッドリー社のサステナビリティ&広報部長ティーナ・トゥオミネンさんは「プラスチックの需要は今後も高まると予測されています。わが社では、安全でリサイクルしやすい木材ベースのプラスチック素材を製造しています」と話す。

同社の木材ベースプラスチック「ウッドリー」(粒状)は、2020年から商用化が始まった。国内のコンビニやレストランには、ウッドリーのロゴ付きパッケージに入ったサンドイッチが並ぶ。コップや鉢植え植物のカバーにも使われている。

ウッドリーの主原料は、世界やヨーロッパの森林認証を取得した森林(針葉樹)の木材。今年末までに「ウッドリーを60~80%、残りを他の素材」で配合し、2025年末までにウッドリー比率80~100%を目指す。有害物質は含まれていないが、生分解性・堆肥化可能ではないため、回収して処理を施し、再びウッドリーを作ることを念頭に置いている。回収時に従来のプラスチックごみが混ざっている場合は、赤外線センサー機器でウッドリー製の素材を識別できるという。

展覧会
京都国立博物館 特別展「日本、美のるつぼ」 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中