最新記事
アパレル

群馬発「国産はわずか1.5%、30年で事業所5分の1」のアパレル業界を持続可能にする革命

2023年10月17日(火)18時45分
岩井光子(ライター)

人と服の幸せな関係を

創業から8年。木島さんは「誰のためのスマート化なのか」、常に原点に立ち返るようにしていると話す。効率化が労働者に還元されなければ、本末転倒になってしまう。

日本では日常着は海外製を買う習慣が浸透し、国産服の市場縮小に歯止めがかからない。そのためカスタムオーダーの顧客を海外に求める努力も欠かせなくなっている。「国産服が万一ゼロまで落ち込んだとしても産業が生き残るためには、海外向けのD2C(消費者直接取引)サイトも提案できるようにしたい」と木島さんは語る。

また、自社サイトにカーボンオフセットやトレーサビリティの機能を追加する準備も進めていて、これらのデジタル証明機能は将来的に中小の事業者に外販する予定もあるという。現状各社に委ねられている環境負荷や労働環境に関する情報開示がいずれ国際ルールとなって義務化した際、中小縫製工場が変化に対応できるようにするためだ。

sdgsfukule20231017_5.jpg

昨年ローンチした自動見積もりサイト「FiTO」では、作りたい服の縫製料金を無料で見積もることができる。このサイトにカーボンオフセット機能なども盛り込んでいく

目指すところは、フクルらしい視点を盛り込んだITプラットフォームの完成だ。

プラットフォームを活用して国内の縫製事業者が自走できるようになれば、中間業者としてのフクルのサポートが不要になり、技術者の工賃はもっと増える。

Who Made My Clothes? フクルでは、提携工場のインタビューを載せたり、見積もりサイトにハリネズミのコンシェルジュをアイコンとして置くなど、発注から納品までの過程に「体温」を感じてもらえる仕掛けを工夫している。

社名は「『服を作る』のすべてを叶える」を縮めたものだ。製造過程や労働環境の透明性を高めることは企業責任でもあるが、購入側にとっても製造過程や労働環境の可視化は監視の意味ばかりでない。農産物のように生産者の顔や制作過程が見えれば、服を買う楽しみも広がるはずだ。

「服と人との幸せな関係性」を模索したいと強調するフクルのミッションは、行き過ぎた繊維産業のバランスを整え、関係性を再構築することなのだろう。1.5%の国産服を持続可能にする挑戦は続く。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中