群馬発「国産はわずか1.5%、30年で事業所5分の1」のアパレル業界を持続可能にする革命
人と服の幸せな関係を
創業から8年。木島さんは「誰のためのスマート化なのか」、常に原点に立ち返るようにしていると話す。効率化が労働者に還元されなければ、本末転倒になってしまう。
日本では日常着は海外製を買う習慣が浸透し、国産服の市場縮小に歯止めがかからない。そのためカスタムオーダーの顧客を海外に求める努力も欠かせなくなっている。「国産服が万一ゼロまで落ち込んだとしても産業が生き残るためには、海外向けのD2C(消費者直接取引)サイトも提案できるようにしたい」と木島さんは語る。
また、自社サイトにカーボンオフセットやトレーサビリティの機能を追加する準備も進めていて、これらのデジタル証明機能は将来的に中小の事業者に外販する予定もあるという。現状各社に委ねられている環境負荷や労働環境に関する情報開示がいずれ国際ルールとなって義務化した際、中小縫製工場が変化に対応できるようにするためだ。
目指すところは、フクルらしい視点を盛り込んだITプラットフォームの完成だ。
プラットフォームを活用して国内の縫製事業者が自走できるようになれば、中間業者としてのフクルのサポートが不要になり、技術者の工賃はもっと増える。
Who Made My Clothes? フクルでは、提携工場のインタビューを載せたり、見積もりサイトにハリネズミのコンシェルジュをアイコンとして置くなど、発注から納品までの過程に「体温」を感じてもらえる仕掛けを工夫している。
社名は「『服を作る』のすべてを叶える」を縮めたものだ。製造過程や労働環境の透明性を高めることは企業責任でもあるが、購入側にとっても製造過程や労働環境の可視化は監視の意味ばかりでない。農産物のように生産者の顔や制作過程が見えれば、服を買う楽しみも広がるはずだ。
「服と人との幸せな関係性」を模索したいと強調するフクルのミッションは、行き過ぎた繊維産業のバランスを整え、関係性を再構築することなのだろう。1.5%の国産服を持続可能にする挑戦は続く。