群馬発「国産はわずか1.5%、30年で事業所5分の1」のアパレル業界を持続可能にする革命
60の中小事業所と提携
フクルの製造方法は、カスタムオーダーの服を効率的に作ることから、大量生産とも完全な受注生産とも異なる「マスカスタマイゼーション(大量受注生産)」の枠にくくられているが、大規模な工場に労働や設備を集約する一般的なそれではない。季節変動性が強く、技術者が減少しているアパレルでは、小規模な製造現場を分散させる方式が向いていると、木島さんは考えた。
事業を協働してもらう縫製工場やフリーの職人は自分で地道に探し回った。「僕も縫製屋の息子です」と名乗ると、仲間意識から心を開いてくれる人が多かったという。
「構造不況で良い仕事に恵まれない」「地域の繊維工場が相次いで倒産して協力相手がいない」「人材不足でオペレーションの一部が手薄になっている」――現場の悩みは深刻だった。
多くの職人が苦手とする新規開拓や価格交渉はフクルが担い、希望があれば布の裁断など縫製前までは自動化。検品など人材難の工場では手が回らない工程も支援するので質の高い縫製仕事をお願いしたいと依頼すると、反応は良かった。縫製工賃は原価率の8割と相場の数倍の値段を提示した。
現在、桐生を中心に、群馬県高崎市、栃木県栃木市、埼玉県深谷市、神奈川県川崎市、新潟県長岡市、さらには関西方面まで約60の中小事業所と提携を結んでいる。1着のリピート生産や20〜50点ほどの小ロット生産を主力に据え、注文先に近い事業所に仕事を回すようにして移動距離も抑えた。
オーダー服は既成服より値が張り、完成まで数カ月かかるイメージがあるが、注文からのリードタイムはおよそ2週間に早めた。受付や見積もりはメールやオンライン対応を主力にし、生地や資材などの在庫情報やデザインパターンは独自のサプライチェーン・マネジメント・システムに集約し、組み合わせを自在にした。
少量多品種を取り扱うのでアイテムも縫製工程も多岐にわたるが、受注から納品までの流れが滞らないよう 「交通整理」するのがフクルの役割だ。