最新記事
アパレル

群馬発「国産はわずか1.5%、30年で事業所5分の1」のアパレル業界を持続可能にする革命

2023年10月17日(火)18時45分
岩井光子(ライター)

60の中小事業所と提携

フクルの製造方法は、カスタムオーダーの服を効率的に作ることから、大量生産とも完全な受注生産とも異なる「マスカスタマイゼーション(大量受注生産)」の枠にくくられているが、大規模な工場に労働や設備を集約する一般的なそれではない。季節変動性が強く、技術者が減少しているアパレルでは、小規模な製造現場を分散させる方式が向いていると、木島さんは考えた。

事業を協働してもらう縫製工場やフリーの職人は自分で地道に探し回った。「僕も縫製屋の息子です」と名乗ると、仲間意識から心を開いてくれる人が多かったという。

「構造不況で良い仕事に恵まれない」「地域の繊維工場が相次いで倒産して協力相手がいない」「人材不足でオペレーションの一部が手薄になっている」――現場の悩みは深刻だった。

多くの職人が苦手とする新規開拓や価格交渉はフクルが担い、希望があれば布の裁断など縫製前までは自動化。検品など人材難の工場では手が回らない工程も支援するので質の高い縫製仕事をお願いしたいと依頼すると、反応は良かった。縫製工賃は原価率の8割と相場の数倍の値段を提示した。

sdgsfukule20231017_2.jpg

フクルのサイトでは、提携工場の取材記事も掲載。親の家業を引き継いだ二代目の苦労や思いを聞き取っている

現在、桐生を中心に、群馬県高崎市、栃木県栃木市、埼玉県深谷市、神奈川県川崎市、新潟県長岡市、さらには関西方面まで約60の中小事業所と提携を結んでいる。1着のリピート生産や20〜50点ほどの小ロット生産を主力に据え、注文先に近い事業所に仕事を回すようにして移動距離も抑えた。

オーダー服は既成服より値が張り、完成まで数カ月かかるイメージがあるが、注文からのリードタイムはおよそ2週間に早めた。受付や見積もりはメールやオンライン対応を主力にし、生地や資材などの在庫情報やデザインパターンは独自のサプライチェーン・マネジメント・システムに集約し、組み合わせを自在にした。

少量多品種を取り扱うのでアイテムも縫製工程も多岐にわたるが、受注から納品までの流れが滞らないよう 「交通整理」するのがフクルの役割だ。

sdgsfukule20231017_3.jpg

自社ECで展開するオーダーワンピースや婦人スーツは既成服の価格帯とほぼ変わらない3万~5万円で提供

sdgsfukule20231017_4.jpg

縫う手間のかかるポケットなどはオプションにして、金額を上乗せしていくシステム。既成服は通常「フル装備」で売られているので、新鮮な視点だ

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中