「コーンシロップ」で地球温暖化と闘う...注目の「気候テック」ユニコーン、ソリューゲンの正体
Engineers Find a Zero-Carbon Way to Make Everyday Chemicals
現在のバイオフォージは原理上、きわめて幅広い工業化学製品を製造できるほか、新しい工業化学製品も製造することができる。つまり、こんにち一般的に使用されているものと同程度、もしくはそれ以上に特定の用途において優れた機能を発揮するような工業化学製品だ。たとえばリン酸塩は現在、腐食を軽減するために世界中の水処理システムで広く使用されているが、これは、水生生物に悪影響を与える有害藻類ブルーム(アオコ)発生の原因にもなる。一方、ソリューゲンが産業規模で製造している代替バイオ分子は、腐食に対してリン酸塩と同等の効果を持つが、その後は分解されて無害な成分になる。同社はほかにも、コンクリート生産、洗浄、農業に利用できる別の化学物質も製造している。さらに同社は、服飾や自動車などの業界全体で広く用いられているポリマーなどの化学物質の製造に乗り出すことも計画している。
バイオフォージが温室効果ガス排出量ゼロというだけでなく、プラント自体も再生可能エネルギーで動いているため、ソリューゲンの事業はカーボンネガティブだ。つまり実質的に、環境に排出する量よりも多くの炭素を環境から取り除いているということだ。チャクラバルティによれば、それに劣らず重要なのは、1万ガロン規模のバイオフォージが、膨大な量の化学物質を製造でき、利益を生み出せることだという。同社は、テキサス州ヒューストンにある50万平方フィートの工場ふたつで、年間1万トンをはるかに超える化学物質を量産している。さらに第三の工場も、2023年中に中西部で操業を開始する予定だ。この拡大資金を得るために、ソリューゲンは民間投資家から5億ドル超を獲得した。
「当社は、化学工業の脱炭素化と脱化石燃料を完遂するチャンスを創造している」とチャクラバルティは話す。
チャクラバルティが思い描くのは、バイオフォージをさまざまなサイズや機能で提供することだ。それらを製造してもいいし、技術ライセンスを他社に提供してもいい。こうしたバイオフォージは自動で稼働するので、化学大手企業から小さな工場まで、業界の誰もが使えるようになるだろう。現時点での最大の課題は、化学物質の買い手を啓蒙し、絶対確実だが大量の炭素を排出する現在の化学物質から、バイオフォージで製造したもっと環境にやさしい代替品に切り替える必要性をわかってもらうことだという。「現時点では、充分な動機がない」とチャクラバルティは説明する。「だが、規制をめぐる環境は変わりつつあり、そうした動機が生まれると期待している」
ソリューゲンの今後7年間の目標は、業界が環境中に排出する炭素量から、自動車2万台を排除した場合に相当する量を削減し、50億本の非分解性ペットボトルを排除できるだけのバイオプラスチックを製造することだ。そのためには、コーンシロップをふんだんに流れ続けさせることが必要になる。
(翻訳:ガリレオ)