「兵庫テロワール旅」を通じて、サステイナブルツーリズムの実現を目指す
公益社団法人ひょうご観光本部
<JR全国6社を主体に、自治体や旅行関連事業者との協働によって行われるデスティネーションキャンペーン(DC)。2023年は兵庫県が14年ぶり2回目の開催地域に選ばれ、兵庫DCとして7月~9月にかけてさまざまなキャンペーンや施策が実施される。その核となるのが、「兵庫テロワール旅」と名付けられたサステイナブルツーリズムについてのブランディングである>
住民が誇りをもって住みたいと思える観光地づくり
テロワールとはワインを語る際に、その味や性質に影響を与える土壌や気候といったブドウ畑を取り巻く環境を意味する専門用語だ。その土地にしかない特徴や個性を指し、転じて古くから根付く伝統や文化、風土を表現する言葉として、広義的に解釈されるケースも見られるようになってきた。
もともと兵庫県は飛鳥時代から明治初期まで続いた令制国でいうところの摂津国(の西部)、播磨国、但馬国、丹波国(の南西部)、淡路国という5つの国が集まって生まれた歴史を持つ。それぞれの国は固有の風土を基盤として発展し、独自の伝統や文化を育んできた。現代でもそのような多様性を内包しているのが兵庫県であり、旅行を通じて各地域に根差した食や文化といった魅力を体験してもらうための取り組みとして、「兵庫テロワール旅」が誕生した。
根幹にあるのは、「住民が誇りをもって住み続けたいと願う豊かな地域社会の実現を目指す」という理念であり、持続可能な観光を意味するサステイナブルツーリズムだ。つまり、環境汚染や自然破壊を誘発することなく、地域の自然や食、伝統、文化などを守りながら観光業を活性化させ、地域住民の暮らしを豊かにする観光地づくりを目的にしている。そして、こうした取り組みが、SDGsに掲げられたサステイナビリティに貢献することを目標にしている。
地場産業の持続性を追求したコラボレーションを展開
兵庫県が目標とするサステイナブルツーリズムは、「企画・調達」、「販売・プロモーション」、「移動・運搬」、「サービス・管理」という4つのセグメントに沿って推進される。そして、旅行者や地域住民、県内事業者、旅行関連事業者と良好な関係を築き、バリューチェーン全体で効果の最大化を狙う。
最初の「企画・調達」では、県内の生産者やシェフを起用するなどして、食におけるサプライチェーンのローカル化を促進。旬の食材を積極的に採用し、季節と共に食を楽しむことを提案するほか、兵庫県産の食材を用いたテロワール弁当の開発・販売も予定している。この弁当は、食材の魅力を最大限に引き出す工夫を凝らして食べ残しによる食品廃棄を減らし、再利用できる容器や包装紙を使用するなど、環境にも配慮。商品開発から廃棄に至るまでの工程において、できるだけ環境負荷を生み出さない試みが行われる。