「陰謀論は犠牲者に失礼」ワシントン飛行機事故後の憶測にパイロットの妻が思うこと
Hurtful Criticism Over Crash
トランプが語ったこと
21年前から民間航空会社に勤める夫は、ロナルド・レーガン・ナショナル空港での離着陸を何度も経験している。航空交通が盛んな空域で、しかもポトマック川沿いをヘリが行き交うため、離着陸の難易度がより高い空港の1つだと、これまでよく言っていた。
今回の事故の原因はいくつも考えられるが、米国家運輸安全委員会(NTSB)の調査が完了するまでは、いずれも仮説にすぎない。だからこそ、当て推量はやめるべきだ。だが残念ながら、そうせずにいられない人々がいる。
ドナルド・トランプ米大統領は、事故はオバマ、バイデン両政権が重視したDEI(多様性・公平性・包括性)に基づく雇用慣行のせいだと非難した。事故機が引き揚げられていないのに、早々と見解を示すことをやめなかった。
遺族と米国民は打ちのめされ、混乱や怒りを感じている。誰かの家族や友人である犠牲者の遺体がまだ見つかっていない時点で、影響力のある人が陰謀論を述べたり、責任論を持ち出すのは実に醜悪だ。
注目度が全ての現代、扇情的なコンテンツが儲かることは分かっている。とはいえ、今はそんな場合ではない。
不明なことばかりのとき、人間は推測し、なんとか答えを見つけようとする。だが悲劇の渦中では、専門家に評価や判断を任せ、個人的な陰謀論は公にすべきでない。
犠牲者と遺族にささげることができる最も大きな贈りものは、共感と敬意を示すことだ。

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