最新記事
航空

「陰謀論は犠牲者に失礼」ワシントン飛行機事故後の憶測にパイロットの妻が思うこと

Hurtful Criticism Over Crash

2025年3月5日(水)17時00分
ジェニファー・キャノン(フリーランスライター)
陰謀論や責任論をやめるよう求めるパイロットの妻、キャノン

当て推量はやめて遺族に思いやりを示してほしいと言うパイロットの妻、キャノン SEVEN SOULS STUDIOS

<空中衝突事故の直後に氾濫した誤報や性急な批判...パイロットの妻は事実に基づく発言を求めている>

1月30日、寝起きの私が最初に目にしたのは、夫が送ってきたメッセージだった。「ワシントンの衝突事故について知りたいなら、一日中ニュースを見ているより多くのことを、この男性が教えてくれる」。


添付されていたのは現役パイロットで、航空安全に詳しいフアン・ブラウンのYouTube動画のリンクだった。

1月29日夜にワシントン近郊のロナルド・レーガン・ナショナル空港で、滑走路に着陸前の米旅客機と米陸軍ヘリが空中衝突し、近くのポトマック川に墜落した事故の状況について、動画は詳細に解説していた。TCAS(空中衝突防止装置)の仕組みや、着陸時などに警告機能が低下する理由も知ることができた。

全く知識がなかったわけではない。私は23年前からパイロットの妻だ。夫は30年以上、航空操縦に従事している。

私が驚き、不快に思ったのは、原因についてネット上に出回った臆測だ。こんな悲劇の最中に思い込みで物を言うのは、犠牲者や遺体の身元判明を待つ遺族への配慮と敬意に欠けている。

事故当初の事実無根の情報の1つが、乗組員3人全員が死亡した軍用ヘリの操縦士についてだ。トランス女性の兵士ジョー・エリスが操縦していたという誤報がSNSに氾濫し、エリスは自ら動画を公開して偽情報の「政治的思惑」を非難した。

米陸軍が遺族の同意の下、事故機の操縦士の氏名を公表すると、その飛行経験をあげつらうコメントが登場した。パイロットの妻として憤りを感じた。操縦をしたこともない人々が、訳知り顔で決め付けるのは不適切だと思えた。

疑問の答えや事実は、事故の捜査が終わらなければ分からない。愛する者を突然失った直後に、批判という二重の打撃を受けるのは遺族にとって本当につらい。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、5会合連続で利下げ 政策の制約度は低下

ビジネス

米人員削減、2月は245%増 連邦政府職員の解雇が

ワールド

トランプ政権、イラン産原油タンカーの海上検査を検討

ビジネス

焦点:セブン、株主還元で株価浮上狙う 本質的な価値
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行為」「消費増税」に等しいとトランプを批判
  • 4
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 5
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 10
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中