【先進医療】遺伝子解析の進歩が変えた「がん治療の新常識」...驚異のパラダイムシフトに迫る
THE AGE OF GENETIC SEQUENCING
「医療保険を支払う側は通常、その検査に臨床上の有用性があることを要求する。乳癌の治療に有用な検査だと証明したいなら、患者数も多く、治療方法も確立されていて、既存のデータもあるから、簡単に実験をデザインできる」と彼女は話す。
だが希少癌となると、そうはいかない。
侮れない生命の謎の奥深さ
イギリス、デンマーク、ドイツ、フランス、スウェーデンなどは、国家的な事業としてWGSを推進している。
「スウェーデンで研究ができて幸運だ」と、国の助成を受けている研究機関ゲノミック・メディシン・スウェーデンのリカール・ブランデル代表は本誌に話した。
「この国では、ゲノム解析、プロテオーム(全タンパク質)解析、画像処理など、あらゆる高速処理技術に政府が投資し、生命科学のインフラが構築されている」
スウェーデンは人口約1000万人の小国で、大学病院は7つしかないが、希少疾患患者のWGSは8000件、癌患者の遺伝子パネル検査は約2万件実施されていると、ブランデルは言う。この国ではWGSにかかる費用は比較的安く、平均4000ドル足らずだ。しかも公的医療保険があらゆる検査に適用される。
今のところアメリカでは、小規模の病院でのWGSの実施はコスト面から困難だが、将来的には医療目的だけでなく一般の人たちの健康長寿のためにWGSが活用されるようになると、ウォーカーはみている。