最新記事
健康

疲労の対義語は? 「休養」ではありません...休養学の医学博士が教える「100%回復」するのに必要な要素とは

2024年7月9日(火)11時52分
片野 秀樹 (日本リカバリー協会代表理事、博士(医学))*PRESIDENT Onlineからの転載

【日常のサイクルに「活力」を加える】

辞書を引くと、疲労の反対語は「活力」であると書いてあります。この活力を加えて4つの要素にしてはどうか、そう考えたのです。


つまり、休養したあとすぐに活動を始めるのではなく、そこからさらに活力に満ちた状態までもっていき、再び活動する、というサイクルです(図表2)。

休養だけでは50%程度しか充電できなくても、活力を加えて満充電に近いところまでもっていくのです。

newsweekjp_20240709021744.jpg片野秀樹『あなたを疲れから救う休養学』(東洋経済新報社)より

【心身を鍛える「超回復理論」とは何か】

では、どうしたら活力を高められるのでしょうか。意外に思われるかもしれませんが、実はあえて軽い負荷を自分に与えると、活力が高まることがわかっています。

そこで思い出していただきたいのが「超回復理論」です。

前回のトレーニングの疲れが回復しきっていないのにトレーニングを続けると、結果的にパフォーマンスはどんどん下がっていってしまいます。そうならないために、アスリートたちは超回復理論にもとづいて、激しいトレーニングのあとに必ず一定の休養をとることでパフォーマンスを上げていきます。

超回復理論は、筋力トレーニングをしている人にはおなじみかもしれません。簡単にいえば「あえて負荷をかけたトレーニングをすると、その直後は疲れて体力が低下するが、そのあと十分な休養をとることで、トレーニングをする前より体力がつく」という現象を説明した理論です(図表3)。

筋トレでいえば重いものをもち上げたり、もち上げる回数を多くしたりして、筋繊維を1回壊します。その後48時間から72時間、つまり2~3日はトレーニングをせずに休養に専念します。すると、トレーニング前よりも筋繊維が肥大しているのです。

ボディービルダーたちはこれを繰り返すことによって、たくましい肉体をつくっていますが、超回復理論は、なにもこうしたアスリートの人たちだけのものではありません。ビジネスパーソンや一般の人たちもぜひ取り入れたい考え方なのです。

newsweekjp_20240709021834.jpg片野秀樹『あなたを疲れから救う休養学』(東洋経済新報社)より

【あえて、自分に負荷をかける】

活力を高めるには、あえて自分に何か負荷をかけることだとお話ししました。

「疲れが取れきっていないのに、もっと疲れることをするなんて、とんでもない」

そう思うかもしれません。しかし適切な負荷をかけたあとにもう一度しっかりと休養の時間をとると、ストレスをかける前よりも体力がつくわけですから、試す価値は十分あるはずです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中