最新記事
健康

病原菌の増殖を防ぎ、働きを抑える...「抹茶」に驚きの効能、歯周病を防ぐ効果が発見される

Matcha for Healthy Gums

2024年6月27日(木)18時29分
ジェス・トムソン(本誌科学担当)
抹茶に歯周病を予防する効果があると判明

歯周病の原因菌の1つに抹茶の溶液をテストしたところ4時間で全滅した GRAFVISION/ISTOCK

<抹茶は歯周炎の原因となる口腔内のPg菌を抑えるという研究が発表された。重い病気にもつながる歯周病を防ぐ救世主に?>

あなたのお気に入りの抹茶ラテは、口の中の健康維持に役立っているかもしれない。5月に学会誌「微生物学スペクトラム」に掲載された論文によると、抹茶は歯周炎を抑える可能性があるという。

歯周炎の原因の1つはポルフィロモナス・ジンジバリス菌(Pg菌)だが、この細菌の働きが抹茶によって抑制されることが発見されたのだ。「抹茶は歯周炎の予防と治療に臨床応用できる可能性がある」と、論文は記している。


研究者らは実験で、抹茶の溶液を16種の口腔内細菌に対してテストした。すると2時間でほぼ全てのPg菌が死に、4時間後には全滅した。

その後、45人の歯周炎患者を対象に抹茶マウスウオッシュの効果をテストしたところ、使った人は使わなかった人に比べて、唾液中のPg菌の数値が有意に低くなっていた。

歯周炎は重度の歯周病で、歯茎の炎症が歯を支える構造にまで広がる。治療しなければ歯を失うことも、歯を支える骨を破壊することもある。

食物中の糖分を餌とする細菌によって歯垢(しこう)が形成されていき、これが除去されないと歯と歯茎の間に生じる歯周ポケット内で取りにくい歯石となることがある。Pg菌は、このプロセスに大きく関与する細菌の1つだ。

Pg菌は特定の条件で破壊的に増殖し、歯茎の状態を悪化させる

「Pg菌は歯周ポケットにすみつきやすい」と、歯科の研究で名高いADAフォーサイス研究所のメアリー・エレン・デイビー上級研究員は言う。

「口腔が健康な状態では、Pg菌は検出されても非常に低い数値にとどまる。でも特定の条件下で破壊的に増殖し、歯茎の状態をひどく悪化させかねない。その結果、慢性的な感染と炎症を引き起こし、放置すれば歯が失われる」

歯垢や歯石が付着している時間が長いほど、歯の生え際の歯肉を刺激する。これが歯茎の炎症を引き起こし、歯周炎につながる。こうして生じた歯周ポケットは、歯垢と歯石、細菌で満たされる。

「歯周炎の危険性が歯科と医学で注目を集めているのには理由がある」と、論文の筆頭執筆者である日本の国立感染症研究所の中尾龍馬・主任研究官は本誌に語った。「歯を失う大きな原因だということだけではない。糖尿病や早産、心血管疾患、誤嚥性肺炎、関節リウマチ、認知障害、癌など多くの慢性炎症性疾患と幅広く関連しているためだ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中