坂東眞理子が語る、宮沢賢治「雨にも負けず」に学ぶこれからのリーダーに必要なこと
【共感力の高さは育った環境も影響】
よくいわれるように、よろこびは、ともによろこぶ人がいると倍増し、悲しみは、ともに悲しんでくれる人がいると半減します。
人生の節目節目の儀式や、結婚式、お葬式などにみんなで集まるのは、結婚をみなでよろこび、人の死をみなで悼む機会を持つことで、よろこびを倍増させ、悲しみを半減しようという、古来の知恵に違いありません。
しかし、この共感力も個人によって差があります。同じ共働き家庭でも、親が忙しくて時間に追われていることがわかって助けようという子どももいれば、親の忙しさなどまったく気にせず、自分の要求だけしか考えない子どももいます。
学校でも、いじめられている友達の様子が変だと気づく生徒もいれば、自分のことで頭がいっぱいの生徒もいます。
団体競技のスポーツや合唱、オーケストラのように、集団で行なう活動をしているとチームメイトの調子に気がつくが、授業を受けているだけの教室では気づかないというように環境の差も影響します。
共感力が高いか、低いかは、生まれつきの差もありますが、それ以上に育った環境に影響されるように思えます。
【小説や歴史が「人間性」に対する洞察を生む】
共感力を育てるためには、いろいろな経験をすることが大事です。いつもスマホやPCを見て一人で行動するのでなく、スポーツやイベントなどで協力したり、コミュニケーションを取ったりする経験をすること。
それによって仲間がどう感じているか知ることができます。実際の経験は大事ですが、そのほか小説やドキュメントで背景や登場人物の思考や行動を知るのも効果があります。
私は子どものころから小説や歴史を読むのが好きで、自分では経験していない栄光や悲惨、恋愛や友情を、本を通じて知っていたことが「人間性」に対する洞察を生んだように思えます。
社会に出て、いろいろな職場で働きましたが、強い仲間意識で結ばれていた職場もありますが、あまり親しくならず、淡々と過ごした職場もありました。
その差はもちろん、チームの仲間との相性、仕事が厳しかったかどうかなど、さまざまな要因がありますが、リーダーのあり方も大きく影響しました。
部下思いで部下の公私の状況を把握し、何気なく気配りしてくれるリーダーのもとでは仲間意識が高まり、自分の業績と評価に頭がいっぱいの上司のもとでは、みんなの心はバラバラでした。
古いタイプのリーダーは大きな権力と影響力を持って部下を指導し、目標を達成させるための強い意志や闘争心を持つことが期待されていました。
【普段は「淡い交わり」でいながら、困難な状況には手をさしのべる】
しかし最近は、そうしたトップダウン型のリーダーではなく、チームメンバーの困難を除き、面倒を見るサーバント型リーダーや、メンバーに当事者意識を持って目標達成に巻き込むインクルーシブ型のリーダーが成果を上げるといわれています。