ADHD家族を支えるための4つの秘訣
Being an ADHD Whisperer
ILLUSTRATION BY SIBERIANART/ISTOCK
<発達障害の家族を支える旅は長い航海と同じ。ゆったり構えて軌道修正を重ねていこう>
ペンとキムのホルダネス夫妻は、パロディー風の楽しい動画付きポッドキャストで人気を博している。話題は子育て(宿題の上手な手伝い方など)から笑える健康法まで多岐にわたるが、新著では深刻かつ切実なテーマに(でもユーモアたっぷりに)取り組んだ。題して『すごいぞ、ADHD』(未邦訳)。なぜ切実かと言えば、夫のペン自身がADHD(注意欠如多動症)と診断されているからだ。
ADHD患者の脳内でどんな化学反応が起きているかといった基礎知識から、患者と家族が毎日を明るく過ごすためのアドバイスまでを盛り込んだ本書だが、全体を眺めると互いを思い合う夫婦のラブレターのようでもある。以下の抜粋では、家庭内でADHD患者を支えるのに役立つ4つの秘訣に焦点を絞った。
先日、私たちのポッドキャストにゲスト出演してくれた人が、父親から何度も聞かされたという船乗りの話を教えてくれた。
船で遠洋航海に出たとしよう。海図に従って正確に舵取りをすれば無事に目的地へ到達するが、方向が少しでもずれていたら、着くのは何キロも離れた別の場所になってしまう。そんな話だった。
ADHDの人がいる家庭の暮らしも、そんな長い船旅に似ている。小さな誤算や誤解が積み重なって、気が付いたら全く予想外の事態に陥っていて、途方に暮れてしまう人がたくさんいる。
でも、ご心配なく。今からでも遅くはない。正しい方向に舵を切ることはできる。大事なのは、何かトラブルがあっても、むきになって対応しないこと。むきになったら、あなたは果てしない「モグラたたき」の世界に落ちる。
キムと私には、今もイースター(復活祭)の晩に家族そろって伝統の「卵割り合戦」をやるという律儀な友人がいる。夕食が済んだら、テーブルを囲んだ全員がそれぞれ固ゆでの卵を持ち、隣の席の人と卵をぶつけ合う。割れたほうの人は負けで、最後まで割れなかった人が勝者となる。
では、勝つためのコツは何か。それは卵をふんわりと持ち、ぶつけたときの衝撃を手で吸収することだ。固く握っていると衝撃がダイレクトに卵に伝わり、殻が割れてしまう。
ADHDを患う人との接し方も、基本的にはこれと同じ。脱力系で、ふんわりと。そうでないと長くは付き合えない。
私たちは昔から、規律を守って努力を重ねれば報われると教えられてきた。でも、それは一般論。時には手綱を緩めて、ゆっくり歩くのもいい。でも、どうやって? 以下にそのヒントを紹介しよう。