最新記事
食事と健康

「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料理研究家が考える理想の食事と生命の法則

2024年4月10日(水)16時55分
福岡 伸一(青山学院大学教授)松田 美智子(料理研究家) *PRESIDENT Onlineからの転載

【「重要なミネラル」が不足することはない】

カロリーは充足できるとして、カロリーにはならない他の必須栄養素、たとえばナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、鉄などのミネラル、あるいは各種ビタミン類は、カップラーメンもしくはハンバーガーだけで足りるだろうか。

図表2を見ていただきたい。チーズバーガー一個には、ナトリウム720mg、カリウム210mg、カルシウム118mg、リン182mg、鉄1.2mgが含まれている。7個食べると、この7倍、ナトリウム5040mg、カリウム1470mg、カルシウム826mg、リン1274mg、鉄8.4mgとなる。

一方、日本人(50歳)の一日に必要な食事由来のミネラル摂取の推奨量は、ナトリウム600mg、カリウム2000mg、カルシウム600mg、リン700mg、鉄10.12mg(経血があるので女性の方が必要量は多くなる)である。

カップラーメンやハンバーガーだけで生活しても、骨や歯のために必要なカルシウム、血液成分の鉄など重要なミネラルが不足することはない(カリウムはやや少なめとなる)。

【食塩摂取は大幅に過剰になってしまう】

しかし、ナトリウムは大幅に過剰摂取してしまうことになる。ナトリウムは食品中では、ほとんど塩化ナトリウム、つまり食塩の形で含まれている。食塩の量は、ナトリウムの量に係数2.54をかけると算出できる。

チーズバーガー7個分のナトリウムは5040mg、これを食塩に換算すると12.80g。日本人の食塩摂取推奨値は、理想的には、1.5g(600ミリグラム×2.54)、高血圧予防のためには、6g未満が推奨されている。

つまり、カップラーメンやハンバーガーだけを食べていると、カロリーやカルシウム、鉄は充足するものの、食塩摂取は大幅に過剰になってしまうのだ。

では、ビタミン類は、どうだろうか。

チーズバーガー1個には、ビタミンA 57μg、ビタミンB1 0.1mg、ビタミンB2 0.15mg、ナイアシン 5.3mg、ビタミンC 1mgが含まれている。7個食べると、この7倍、ビタミンA 413μg、ビタミンB1 0.7mg、ビタミンB2 0.112mg、ナイアシン 37.1mg、ビタミンC 7mgとなる。

日本人の一日のビタミン摂取基準量(50歳)は、ビタミンAは男900μg、女700μg、ビタミンB1は男1.3mg、女1.1mg、ビタミンB2は男1.5mg、女1.2mg、ナイアシンは男14mg、女11mg、ビタミンCは男女ともに100mgとされている。

newsweekjp_20240410073936.jpg

(出所=福岡伸一、松田美智子『生物学者と料理研究家が考える「理想のレシピ」』)

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中