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「朝ごはんは食べたほうがいい?」「短期間で痩せたい人におススメは?」健康法のウソとホントを医師が解説

2024年3月28日(木)16時00分
大坂貴史(医師)*PRESIDENT Onlineからの転載

朝食を抜いていると糖尿病のリスクが1.2倍高い

朝ごはん、しっかり食べていますか? 「朝ごはんを食べないと健康に悪い」ということは以前からよく聞いたことがあるかと思います。これについて具体的に解説していきます。

朝食を抜くことと健康との関係に関する質の高い研究は多く存在します。まず紹介するのは40〜75歳のアメリカ成人6550人の朝食抜きと心血管病及び全ての原因による死亡についての調査について2019年に発表されました(※16)。

このうち5.1%が全く朝食を摂取せず、10.9%がほとんど朝食を摂取せず、25.0%がときどき朝食を摂取し、59.0%が毎日朝食を摂取していました。

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Hurst Photo-shutterstock

年齢、性別、人種/民族、社会経済的地位、食事とライフスタイルの要因、BMI、心臓血管の危険因子で調整した後、朝食を全く摂取しなかった参加者は毎日朝食を摂取する参加者と比べて心血管病による死亡率は1.87倍、全ての原因に死亡については1.19倍高かったことがわかりました。

また、朝食抜きと糖尿病の関係について評価した8件の研究から10万6935人をまとめて分析した研究では、朝食を抜いていると糖尿病のリスクが1.2倍高かったと報告されており(※17)、朝食抜きと肥満について評価した45件の観察研究をまとめて分析した報告(※18)では、1週間当たりの朝食摂取頻度が低い人は高い人と比べて1.48倍肥満の頻度が高かったとされています。

他にも朝食抜きの人には高血圧症の人が多いという報告(※19)もあります。

ただ、それだけでなく、朝食を抜く人は喫煙者である可能性が高く、飲酒量が多く、甘いジュースを飲む量が多く、運動量が少なく、睡眠の質が低下しており、一般的な健康認識、活力、社会的機能、感情的役割、メンタルヘルス、及び総合的な健康状態などが悪いと言われています(※20)。

朝食を抜くのが悪いのか朝食を抜いていた生活をしている人の他の生活が悪いのかがはっきりしていないのです。

「ダイエットのために朝食をとる」は逆効果になる可能性

そして、朝食を食べるとダイエットになるかどうかについてはよくわかっていません。

肥満である23人の成人に「必ず朝食を食べる」もしくは「必ず食事を食べない」のどちらかのみを守ってもらい、他は自由に6週間生活をして体重の変化などを評価して研究(※21)では、朝食を食べた人と食べていない人で体重の変化量に違いはなく、どちらも増加していました。

また同様に肥満成人309人に対して、「一般的な食事指導」「毎日10時に朝ごはんを食べる」「毎日11時までは食事をとらない」の3つの方法を16週間過ごしていただき体重の変化を見た研究では、3つの方法で体重の変化量の違いはなかったと報告されています(※22)。

そしてこれらを含めた13の研究をまとめた報告(※23)では朝食を食べた人のほうが1日のエネルギー摂取量が多く、朝食を抜いた人の方がむしろわずかに体重が減ったとされています。

これらのことから、「ダイエットのために朝食をとりましょう」というのは妥当とは言えず、逆効果になる可能性すらあると考えられます。

朝ごはんが大切な点としては、朝食を食べずにいることでたんぱく質が1食欠けてしまうデメリットがあり、筋肉にとって朝ごはんは重要である可能性があります。

また、血糖値という点において朝ごはんを抜くことで昼食後の血糖値が上がり(※24)、2型糖尿病の人の血糖変動が大きくなる可能性が指摘されています(※25)。糖尿病の人にとって、朝ごはんはより重要そうです。

朝食を食べている人は健康に繋がる可能性は高いです。ただ、それは朝食を食べるか食べないかの純粋な問題ではなさそうで、他の生活環境などの影響があるかもしれません。

その上で朝食を食べていない人が食べることは、筋肉や血糖値によい影響を与える可能性がありますが、単純に朝ごはんだけ増やせば肥満に繋がりますし、朝ごはんの習慣だけ変えても健康には繋がらないかもしれません。朝食がどのように健康につながるかはこれからの研究に期待されます。

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大坂貴史『75歳の親に知ってほしい!筋トレと食事法』(クロスメディア・パブリッシング)


※1 ElSayed NA, et al. 5. Facilitating Positive Health Behaviors and Well-being to Improve Health Outcomes: Standards of Care in Diabetes-2023. Diabetes Care. 2023 Jan 1;46(Supple 1):S68-S96.

※2 Solomon TPJ, et al. Immediate post-breakfast physical activity improves interstitial postprandial glycemia: a comparison of different activity-meal timings. Pflugers Arch. 2020 Feb;472(2):271-280.

※3 WHO 身体活動・座位行動ガイドライン

※4 Dos Santos M, et al. Association of the "Weekend Warrior" and Other Leisure-time Physical Activity Patterns With All-Cause and Cause-Specific Mortality: A Nationwide Cohort Study. JAMA Intern Med. 2022 Aug 1;182(8):840-848.

※5 Inoue K, et al. Association of Daily Step Patterns With Mortality in US Adults. JAMA Netw Open. 2023 Mar 1;6(3):e235174.

※6 令和元年 国民健康栄養調査

※7 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット 三大栄養素の炭水化物の働きと1 日の摂取量

※8 Imamura F, et al. Consumption of sugar sweetened beverages, artificially sweetened beverages, and fruit juice and incidence of type 2 diabetes: systematic review, meta-analysis, and estimation of population attributable fraction. BMJ. 2015 Jul 21;351:h3576.

※9 Hiroshi N, et al. Long-term Low-carbohydrate Diets and Type 2 Diabetes Risk: A Systematic Review and Meta-analysis of Observational Studies. Journal of General and Family Medicine. 2016 17;1 60-70

※10 日本肥満学会 肥満症診療ガイドライン 2022

※11 Naude CE, et al. Low carbohydrate versus isoenergetic balanced diets for reducing weight and cardiovascular risk: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2014 Jul 9;9(7):e100652.

※12 Sacks FM, et al. Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates. N Engl J Med. 2009 Feb 26;360(9):859-73.

※13 Foster GD, et al. A randomized trial of a low-carbohydrate diet for obesity. N Engl J Med. 2003 May 22;348(21):2082-90.

※14 Seidelmann SB, et al. Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis. Lancet Public Health. 2018 Sep;3(9):e419-e428.

※15 Yancy WS Jr, et al. A low-carbohydrate, ketogenic diet versus a low-fat diet to treat obesity and hyperlipidemia: a randomized, controlled trial. Ann Intern Med. 2004 May 18;140(10):769-77.

※16 Rong S, et al. Association of Skipping Breakfast With Cardiovascular and All-Cause Mortality. J Am Coll Cardiol. 2019 Apr 30;73(16):2025-2032.

※17 Bi H, et al. Breakfast skipping and the risk of type 2 diabetes: a meta-analysis of observational studies. Public Health Nutr. 2015 Nov;18(16):3013-9.

※18 Ma X, et al. Skipping breakfast is associated with overweight and obesity: A systematic review and meta-analysis. Obes Res Clin Pract. 2020 Jan-Feb;14(1):1-8.

※19 Li Z, et al. Skipping Breakfast Is Associated with Hypertension in Adults: A Meta-Analysis. Int J Hypertens. 2022 Mar 3;2022:7245223.

※20 Wicherski J, et al. Association between Breakfast Skipping and Body Weight-A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Longitudinal Studies. Nutrients. 2021 Jan 19;13(1):272.

※21 Chowdhury EA, et al. The causal role of breakfast in energy balance and health: a randomized controlled trial in obese adults. Am J Clin Nutr. 2016 Mar;103(3):747-56.

※22 Dhurandhar EJ, et al. The effectiveness of breakfast recommendations on weight loss: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2014 Aug;100(2):507-13.

※23 Sievert K, et al. Effect of breakfast on weight and energy intake: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ. 2019 Jan 30;364:l42.

※24 Ogata H, et al. Association between breakfast skipping and postprandial hyperglycaemia after lunch in healthy young individuals. Br J Nutr. 2019 Aug 28;122(4):431-440.

※25 Hashimoto Y, Osaka T, et al. Skipping breakfast is associated with glycemic variability in patients with type 2 diabetes. Nutrition. 2020 Mar;71:110639.

※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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