「朝ごはんは食べたほうがいい?」「短期間で痩せたい人におススメは?」健康法のウソとホントを医師が解説
短時間で痩せたい人には低炭水化物食が他の食事よりも有利
さて、糖質制限食が痩せるのかどうかですが、まず根本的に、痩せるためには摂取エネルギーが消費エネルギーより少なくなる必要があります(※10)。現時点でこれを覆して痩せる方法を示した報告はありません。
ですので、糖質さえとらなければ他は何をどれだけ食べても太らないなどの言説がしばしば見られますが、残念ながら根拠のない言説となります。
逆に言えば、糖質制限をすることで摂取エネルギーが減り、消費エネルギーより少なくなれば体重は減るということになります。実際、多くの研究において糖質制限で体重減少が見られています。
例えば炭水化物を制限する食事の効果を検証するために複数の研究をまとめて分析された研究(※11)では炭水化物制限によって体重減少が見られています。
しかし、バランスのとれた食事と比較した対照群と比べると、炭水化物制限との差はなく、どちらも体重減少の程度は同様でした。
また、肥満の成人811人にたんぱく質、脂質、炭水化物のエネルギーバランスを異なる4種類にランダムに振り分けて2年間の体重減少量を評価した研究(※12)では、結果、どのパターンの食事でも体重減少量は変わらず、食事のバランスより摂取エネルギー量を減らすことの重要性が大切であることが示されています。
ちなみに炭水化物に関しては総エネルギーの65%と35%の比較がされましたが、体重減少量は同様でした。
低炭水化物食は他の減量より短期間で結果が出やすい可能性が報告されています。
63人の肥満成人を低炭水化物食もしくは従来の食事療法にランダムに振り分けて1年間追跡した研究(※13)では最初の6カ月間、普通の食事療法より大幅な体重減少をもたらしましたが、1年後にはその差がなくなっています。
逆に言えば、短時間で痩せたい人には低炭水化物食が他の食事よりも有利な可能性があります。
低炭水化物食で大事なたんぱく質の種類
また、炭水化物を減らすということは説明がしやすいという点もメリットがあります。定食屋ではご飯の量を減らせばいいわけですし、外食でも麺類なら量を調整しやすいです。また、間食についても高カロリーなものは炭水化物が多いものが多く、その点も説明がしやすいです。
長期間、炭水化物が少ない食事をとることが健康によくないとされる研究もあります。45~64歳の成人1万5428人を食事の内容との関係について25年間観察した研究において、炭水化物の摂取量は多くても少なくてもよくないことが報告されています(※14)。
また、43万2179人をまとめて解析した結果でも低炭水化物消費(<40%)と高炭水化物消費(>70%)の両方が、適度な摂取(50~55%)よりも、死亡リスクが高いことが報告されています。
ただ、子羊、牛肉、豚肉、鶏肉などの動物性たんぱく質と脂肪を中心にした低炭水化物の食事パターンでは死亡率が高く、ナッツや野菜などの植物性由来のたんぱく質と脂肪を摂取する場合は死亡率が低い傾向にあり、低炭水化物食については炭水化物以外の食事の内容が重要であることが考えられています。
また、高コレステロール血症の人に低炭水化物食か低脂肪食を半年間続けた研究において、低脂肪食と比べて、低炭水化物食では便秘、頭痛、口臭、筋肉のけいれん、下痢、全身脱力感などが多かったということが報告されています(※15)。
体重を減らす場合は糖質制限食(低炭水化物食)のメリットとデメリットを理解してうまく使っていきましょう。