最新記事
健康

「朝ごはんは食べたほうがいい?」「短期間で痩せたい人におススメは?」健康法のウソとホントを医師が解説

2024年3月28日(木)16時00分
大坂貴史(医師)*PRESIDENT Onlineからの転載

短時間で痩せたい人には低炭水化物食が他の食事よりも有利

さて、糖質制限食が痩せるのかどうかですが、まず根本的に、痩せるためには摂取エネルギーが消費エネルギーより少なくなる必要があります(※10)。現時点でこれを覆して痩せる方法を示した報告はありません。

ですので、糖質さえとらなければ他は何をどれだけ食べても太らないなどの言説がしばしば見られますが、残念ながら根拠のない言説となります。

逆に言えば、糖質制限をすることで摂取エネルギーが減り、消費エネルギーより少なくなれば体重は減るということになります。実際、多くの研究において糖質制限で体重減少が見られています。

例えば炭水化物を制限する食事の効果を検証するために複数の研究をまとめて分析された研究(※11)では炭水化物制限によって体重減少が見られています。

しかし、バランスのとれた食事と比較した対照群と比べると、炭水化物制限との差はなく、どちらも体重減少の程度は同様でした。

また、肥満の成人811人にたんぱく質、脂質、炭水化物のエネルギーバランスを異なる4種類にランダムに振り分けて2年間の体重減少量を評価した研究(※12)では、結果、どのパターンの食事でも体重減少量は変わらず、食事のバランスより摂取エネルギー量を減らすことの重要性が大切であることが示されています。

ちなみに炭水化物に関しては総エネルギーの65%と35%の比較がされましたが、体重減少量は同様でした。

低炭水化物食は他の減量より短期間で結果が出やすい可能性が報告されています。

63人の肥満成人を低炭水化物食もしくは従来の食事療法にランダムに振り分けて1年間追跡した研究(※13)では最初の6カ月間、普通の食事療法より大幅な体重減少をもたらしましたが、1年後にはその差がなくなっています。

逆に言えば、短時間で痩せたい人には低炭水化物食が他の食事よりも有利な可能性があります。

低炭水化物食で大事なたんぱく質の種類

また、炭水化物を減らすということは説明がしやすいという点もメリットがあります。定食屋ではご飯の量を減らせばいいわけですし、外食でも麺類なら量を調整しやすいです。また、間食についても高カロリーなものは炭水化物が多いものが多く、その点も説明がしやすいです。

長期間、炭水化物が少ない食事をとることが健康によくないとされる研究もあります。45~64歳の成人1万5428人を食事の内容との関係について25年間観察した研究において、炭水化物の摂取量は多くても少なくてもよくないことが報告されています(※14)。

また、43万2179人をまとめて解析した結果でも低炭水化物消費(<40%)と高炭水化物消費(>70%)の両方が、適度な摂取(50~55%)よりも、死亡リスクが高いことが報告されています。

ただ、子羊、牛肉、豚肉、鶏肉などの動物性たんぱく質と脂肪を中心にした低炭水化物の食事パターンでは死亡率が高く、ナッツや野菜などの植物性由来のたんぱく質と脂肪を摂取する場合は死亡率が低い傾向にあり、低炭水化物食については炭水化物以外の食事の内容が重要であることが考えられています。

また、高コレステロール血症の人に低炭水化物食か低脂肪食を半年間続けた研究において、低脂肪食と比べて、低炭水化物食では便秘、頭痛、口臭、筋肉のけいれん、下痢、全身脱力感などが多かったということが報告されています(※15)。

体重を減らす場合は糖質制限食(低炭水化物食)のメリットとデメリットを理解してうまく使っていきましょう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中