最新記事
健康

「朝ごはんは食べたほうがいい?」「短期間で痩せたい人におススメは?」健康法のウソとホントを医師が解説

2024年3月28日(木)16時00分
大坂貴史(医師)*PRESIDENT Onlineからの転載

「週3日以上は8000歩」で死亡率16.4%減

また、先述の研究はいわゆる中等度以上の運動の量の話ですが、もう少しライトな運動であるウォーキングについて、週末しかしなくてもメリットがあるのではないかという話があります。それは2023年に日本から発表された研究(※5)です。

アメリカの成人3101人について、週に8000歩以上を歩いた日数(0日、1~2日、3~7日)によってグループ化を行い、10年間における全ての原因による死亡率と心血管病による死亡率について評価しました。

その結果、8000歩以上歩いた日が1日も達成しなかった人に比べて、週に1~2日でも8000歩以上を達成した日がある人で死亡リスクが14.9%低く、週3日以上で16.4%低かったということでした。

またこの8000歩という基準についてはその値を6000歩~1万歩まで変えたとしても結果は変わらなかったということです。

普段は仕事で忙しい人、梅雨時などで雨が多くてなかなか外に行けない時、身体に少し負担がかかるような中等度以上の運動の場合は1週間分をまとめて実施しても普段と変わらない健康効果を得ることができますし、ウォーキングについては週1~2日でも8000歩以上歩くことで大きく死亡リスクを減らすことができますので、コツコツしないと意味がない! ということはなさそうです。

できる日があれば身体を動かしましょう。

糖質制限の本当と嘘

糖質制限については多くの書籍が出版されています。そしてその多くの書籍において、糖質制限がダイエットによいと書かれています。それは事実でしょうか。

newsweekjp_20240328033100.jpg

Krakenimages.com-shutterstock

まず、糖質制限食のお話をする上で糖質制限とは何を指すのかについて確認しておきましょう。実際、「糖質制限」という言葉にはかなり幅があります。

論文では炭水化物の摂取量が総カロリーの何%なのかもしくは何グラムという記載がされていますが、研究によってそれぞれは異なります。

例えば炭水化物を総カロリーの50%以下に制限した研究で得られた結果と10%未満に制限した研究で得られた結果は、それぞれ別の解釈が必要です。つまり、実際糖質制限には明確な定義がなく、かなり幅広い概念なのです。

また、令和元年の国民健康栄養調査によると現在20歳以上の日本人における総カロリーに対する炭水化物の平均の割合は56.4%です(※6)。糖質制限食の研究において、糖質制限の効果を説明するために比較される対象の食事が高炭水化物食であることがあります。

その場合、「糖質制限食は○○というメリット/デメリットがある」というのは正確には、「高炭水化物食と比べて」という文言がつきます。

ということは今我々が食べている普段の食事との比較ではないのです。つまり、単純にいま食べている食事から、糖質制限食に変えたところで、その効果は得られるかはわかりません。

炭水化物といっても、ぶどう糖や果糖などの単糖類と呼ばれるものから、でんぷんなどの多糖類、こんにゃくや寒天に含まれるグルコマンナンやアガロースなどの食物繊維まであり、そのどれの話をしているのか、ということも重要です(※7)。

たとえば17件のコホート研究に含まれた3万8253人をまとめた報告(※8)では砂糖入り飲料の摂取量が多いほど糖尿病の発症率が高くなるとされている一方、11件のコホート研究に含まれた44万669人をまとめた研究(※9)では高炭水化物食と比べて、低炭水化物食は糖尿病の発症に差はないことが報告されています。

つまり、単糖、2糖類は糖尿病のリスクである一方、炭水化物全体で考えると糖尿病のリスクではないということです。ただ、このような複数の研究をまとめた報告では先述のように低炭水化物食・高炭水化物食の定義がそれぞれの研究でバラバラであることに注意が必要です。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中