「箱根駅伝マネーゲーム」のエグい格差 学生ランナーが月30万円不労所得を得ているという現実
たすきを使った箱根駅伝の広告 撮影=プレジデントオンライン編集部
毎回高視聴率を出す、正月の箱根駅伝。各大学は上位を狙うため、優秀な高校生を入学させようと躍起になっている。スポーツライターの酒井政人さんは「高校トップクラスの選手になると、授業料免除は当たり前で、寮費、食事代、合宿代を大学が負担。さらに返済不要の奨学金を用意するチームもある。月30万円という奨学金を手にする選手もいる」という――。
月数十万円を受け取る選手たちがいる現実
箱根駅伝の人気が高まるにつれて、有力選手の場合は、「優勝を狙える大学」「世界を目指せる大学」「練習環境の良い大学」「ブランド力のある大学」「入学条件の良い大学」を吟味して、選ぶことができるようになってきた。その結果、近年は"マネーゲーム"がエスカレートする一方だ。なかには授業料免除の選手を10人近くもスポーツ推薦枠で獲得している大学もある。
高校トップクラスの選手になると、授業料免除は当たり前でプラスアルファが必要になってくる場合もある。具体的にいうと、寮費、食事代、合宿代を大学が負担。さらに返済不要の奨学金を用意しているチームもあるのだ。ある強豪大学は特待生が4段階あり、Cは授業料・寮費免除、Bはプラスして月5万円の奨学金、Aは月に10万円、Sは月に15万円。高校時代の実績と期待度に応じて、選手への"報酬"が変わってくる。
別の大学では月に30万円という奨学金を手にしている選手もいる。筆者が知る限りの最高額で、それだけの奨学金を複数の大学が準備している。「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、大卒の初任給は22万8500円。この額を優に超える金額を受け取る選手を「アマチュア選手」や「学生ランナー」と呼べるのだろうか。
この"奨学金問題"は今年3月にあった大学指導者の研修会でも話題になったという。ケニア人留学生も奨学金を受け取っているが、日本では慎ましい生活を送り、ケニアの実家に送金したり、帰国時に大量のお土産を持参する選手が大半だ。一方、日本人で多額の奨学金を受け取っている選手は、ブランド品に身を包むなど、散財する選手が多い印象だ。
筆者が大学時代、授業料免除はあっても、奨学金を出している大学は非常に少なかった。これも時代の流れだろう。しかし、箱根駅伝は「学生が仲間のためにタスキをつなぐ姿が美しい」と感じている人が多いはず。この現実を知ってしまうと、箱根駅伝を観る目が変わってくる可能性がある。そのせいか、読売新聞、スポーツ報知、日本テレビはこの問題に触れようとしない。これも大きな問題だ。
箱根駅伝に出場する選手は無報酬だが、学生ランナーを取り巻く環境では大きなお金が動いている。