「コロナ禍のマスク生活で免疫力が低下」はウソ 小児科の発熱外来が今、大混雑している根本原因とは
医療機関や高齢者施設ではマスクの着用を
実際に、新型コロナが第5類になってからは、病院やクリニックにおいてさえマスクをしない人が増えました。うちのクリニックにも、お子さん(2歳以上)にひどい咳や鼻水、高熱があってもマスクをさせず、ご自身もマスクをせずに受診される保護者の方が少なからずいらっしゃいます。
確かにマスク着用は個人の判断が基本となりましたし、無理強いすることはできません。ただ、周囲に感染を広げないためにも、ご自身を守るためにも医療機関や高齢者施設、混雑したバスや電車などでは着用したほうがいいのです。日本医師会も厚生労働省も、それらの場所でのマスクの着用を推奨しています。
先日、マスクをせずに受診される保護者の方にそうご説明したところ、「でも保育園でマスクを取らされてしまうんです」とのことでした。たとえ保育園の中ではマスクを外していても、さまざまな感染症の方が来院される医療機関ではマスクをしたほうがいいでしょう。マスクを着ける目的は、新型コロナを予防することだけではありません。RSウイルス、溶連菌、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、インフルエンザなどのさまざまな感染症を予防するためです。
基本の感染予防策をしっかり行うのが最善の方法
こうして現在の感染症の流行状況を考えると、この3年間に私たちが行っていた感染予防対策は効果的だったことがよくわかります。飛沫感染や接触感染を起こすさまざまな感染症は、本気で対策すればかなり予防できるのです。やはり三密を避ける、手を洗う、マスクをすることは有効だったのです。
そして、感染症にどんどん感染して抗体を高めようとする必要はありません。大勢の人が感染症にかかれば、重症化したり亡くなったりする子供が出てしまいます。何らかの感染症にかかっても必ず抗体価が上がるとは限りません。例え何らかのウイルスに対する抗体価が上がったとしても、重症化したり、合併症が起こったりして苦しんだり、後遺症が残ったり、命を失ったりしたら本末転倒です。ヒブ(ヘモフィルス・インフルエンザb型菌)に感染して細菌性髄膜炎になり、重篤な後遺症が残った場合に「それでも抗体がついたからよかった」と思う人はいないでしょう。しかも、新型コロナのように何回でも感染するウイルス、細菌だってあるのです。
今、小さいお子さんのいるご両親は、さまざまな感染症が流行していて、小児科が混み合っていて、とても不安だと思います。ワクチンで防ぐことのできる感染症は、ワクチンで予防しましょう。そのうえでコロナ禍によって習慣化した基本の感染予防対策をしっかり行うのが最善の方法だと思います。
森戸 やすみ(もりと・やすみ)
小児科専門医
1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内で開業。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』など著書多数。