地産地消を入り口に、キャンパーを地域観光に導くテロワールキャンプ
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日本全国のキャンプ場と地域の農家を繋ぐプラットフォーム「TerroirCAMP」を展開する山崎繁幸氏
<農山漁村発のイノベーションを推進させるために、農林水産省が手掛ける起業支援プラットフォームのINACOME(イナカム)。この度、「農山漁村発イノベーション INACOMEビジネスコンテスト2022」が開催され、最優秀賞に『キャンプde地産地消「TerroirCAMP」(テロワールキャンプ)』(以下、TerroirCAMP)が選ばれた。地方経済の活性化を促す新たなビジネスモデルとして期待が寄せられている>
生産者と消費者を直接つなげるビジネス
TerroirCAMPを企画した山崎繁幸氏は、マーケティング、プロモーション、イベントなどのコミュニケーションデザインや地方創生事業を手掛ける株式会社Engi(エンギ)で取締役CSOクリエイティブディレクターとして活躍。過去には飲食店情報サイトを運営するぐるなびに13年間在籍し、飲食業界に精通した経歴をもつ。
実は、TerroirCAMPは2022年1月からビジネスとしてスタートしている。そのアイデアの発端になったのが、2016年から同社が展開しているBBQ TERRACE(バーベキュー テラス)という事業形態だ。
「前職では農家に対して、飲食店に農産物を直接販売するという新しい販路を提案。約800人の農家と会って改めて感じたのは、農家から直接いただく野菜は非常に美味しいこと。この体験に新しい価値を見出せるのではないかと思った」と、当時を振り変える。
以前から飲食店の収益で問題になっていたのが利益率の低さであり、家賃などの固定費と人件費がのしかかるため改善が進まなかった。山崎氏が家賃や人件費を抑えることはできないかと辿り着いたのが、遊休地を活用したBBQ TERRACEだった。
「使っていないビルの屋上や倉庫、広場といった遊休地をもつオーナーとフランチャイズ契約し、オーナーはバーベキュー場として経営。お客様は生産者から直接届く食材をバーベキューとして楽しむので、人件費も極端に減らすことができる」という、新しいビジネスモデルが誕生した。
JA直売所が扱う地元の食材をキャンプ場へ届ける
しかし、2020年春からコロナ禍が本格化したことでフランチャイズ展開のスピードが鈍化。その頃、キャンプ場関係者からBBQ TERRACEで使っている地元の食材を使いたいという要望があり、キャンプ場へ食材を卸す新たな事業がスタートした。
背景には、「キャンプ場の近くには地元の食材を売っているところがほとんどなく、そもそもキャンプ場は少ない人数で運営するローコストオペレーションなので、買いに行けるスタッフもいない。またキャンプ場は僻地にあることが多く、配送してくれる業者も見つけくい」という事情があった。
当時、食材を提供する生産者はEngiが開拓していたが、キャンプ場からの要望が増えたため、JAに協業を提案した。これがTerroirCAMPの始まりだ。キャンプ場利用者がバーベキュー食材の購入を希望した場合、キャンプ場近くのJA直売所などから地元の食材が送られる仕組みを整えた。
「ほとんどのスーパーなどでは焼肉用の薄切りの肉しかなく、バーベキューに適した塊肉を売っていない。そのため肉はイチボやランプといった赤身の塊肉を用意。また、最も差別化を図れるのが野菜。玉ネギやカボチャは丸ごと焼くととても美味しく、変わった色のニンジンやズッキーニが入るなど、期待以上の内容が好評」だという。
山崎氏がTerroirCAMPを進めていくなかでわかったことがある。それは全国約1500カ所にあるJA直売所のうち約半数は赤字経営であり、黒字経営のところは直売所以外の販売ルートを確保していることが多かったことだ。TerroirCAMPはJA直売所にとって商流拡大に繋がり、キャンプ場で食材が売れることで約160億円の経済効果をもたらす計算だ。