最新記事

日本社会

年金は何歳から受給するのが正解? 早死にしたら損だから早めにもらおう、という人の「残念な勘違い」

2023年2月28日(火)17時35分
大江加代(確定拠出年金アナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

公的年金受給開始年齢は原則65歳ですが、希望すれば60歳から75歳までの間で受け取り始める年齢を自由に選ぶことができます。65歳より前にもらい始めることを「繰り上げ受給」、66歳以降にもらい始めることを「繰り下げ受給」といいます。

「早く受け取ったほうが安心だ」と思っている人は、繰り上げ受給を選んでしまうかもしれません。繰り上げ受給は、年金が早くもらえる分、よくない条件がついてきます。それは、年金額が減額されること。その減額率は、法改正によって1カ月あたり0.5%から0.4%に縮小されましたが、それでも60歳まで繰り上げると24%も減ってしまいます。そして、この減額率は一生変わりません。

繰り上げ受給は長生きするほど後悔する

繰り上げ受給には、減額以外にもいくつかデメリットがあります。

たとえば、繰り上げ請求日以降に病気やケガが悪化し障害が重くなっても、障害基礎年金をもらうことができなくなります。また65歳になるまでは、遺族厚生年金などほかの公的年金を一緒にもらうことができません。したがって、繰り上げ受給中に配偶者が亡くなると、減額された自分の年金か遺族年金かどちらかひとつを選ぶことになります。

そして、いったん年金受給者になってしまうと、iDeCoも続けられませんので、じぶん年金を増やす道も狭まります。

よく「少ない年金でも長くもらえば得なんじゃないの?」という人がいますが、これも間違いです。

繰り上げ受給は、生きる年数が長くなればなるほど損になるのです。

図表3をご覧ください。これは、年金を各年齢から受け取り始めた場合の総額を比較したものです。60歳からもらい始めた人は、81歳のときに65歳からもらい始めた人に追い越されます。その後は長生きするほど受け取り総額の差が開く一方です。

図表3 年金受給開始時期ともらえる年金額
※『役所や会社は教えてくれない! 定年と年金 3つの年金と退職金を最大限に受け取る方法』(ART NEXT)より

年金は早くもらい始めても得しないどころか、デメリットが多すぎることがおわかりいただけたでしょうか。もちろん、72歳ぐらいで亡くなってしまった場合は、「早くもらっておいてよかった」となるかもしれません。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

マネタリーベース3月は前年比3.1%減、緩やかな減

ワールド

メキシコ政府、今年の成長率見通しを1.5-2.3%

ビジネス

EUが排ガス規制の猶予期間延長、今年いっぱいを3年

ビジネス

スペースX、ベトナムにスターリンク拠点計画=関係者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中