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年金は何歳から受給するのが正解? 早死にしたら損だから早めにもらおう、という人の「残念な勘違い」

2023年2月28日(火)17時35分
大江加代(確定拠出年金アナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

72歳というのは、男性の健康寿命とほぼ同じ年齢です。男性の死亡数最多年齢が88歳ですから、その後15年ほど生きる人が多いのです。女性ならば、さらに健康寿命から死亡数最多年齢までの期間が長くなります。年金が真に必要な時期というのは、この健康寿命が尽きて働けなくなってからの期間です。

年金は「長生きリスクに備える保険」なのですから、「長生きしたときにもらおう」という考え方を前提にしたほうがうまく活用できます。

なぜなら、年金は遅くもらうほど増えるしくみがあるからです。

図表4 働けなくなる70代後半に備える!
※『役所や会社は教えてくれない! 定年と年金 3つの年金と退職金を最大限に受け取る方法』(ART NEXT)より

ノーリスクで年利8.4%の金融商品

年金を増やすもっとも簡単な方法は、受給開始年齢を繰り下げることです。

公的年金は、66歳以降にもらい始めると1カ月あたり0.7%増額します。1年繰り下げれば8.4%も受け取り額を増やすことができます。

日本は長い間、超低金利時代が続いています。そこで投資ブームが起こっているわけですが、投資は必ず儲かるというものではありません。株や投資信託などは、つねに値下がりや元本割れリスクがあります。

ところが、公的年金は、ノーリスクで年利8.4%の運用ができるのです。これほど安全にお金が増やせる金融商品はほかにないでしょう。

もしもあなたが、60歳から公的年金をもらい始めて、退職金を投資で運用して増やそうなどと考えているなら、それはやめたほうがいいです。そのプランだと年金は減額されているし、退職金も投資で減ってしまうかもしれません。だったらむしろ、退職金を取り崩して70歳まで生活し、公的年金を5年遅くもらい始めたほうが確実にお金を増やせます。

繰り下げ受給の上限年齢は75歳です。したがって、65歳から10年繰り下げて年金をもらうと、84%も受給額が増えます。

図表5 繰り下げ受給のしくみ
※『役所や会社は教えてくれない! 定年と年金 3つの年金と退職金を最大限に受け取る方法』(ART NEXT)より

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